一撃を入れる
私は私を慕い付き従ってくれる者達の事だけを考えれば良いのだ。
ここで「やさしさ」を見せて「温情」を目の前の敵たちである、
デルフィナス王国の艦隊に掛けたとしてもその回答は解りきっている。
―ファルスティンは交渉を決裂させたとしても―
―砲弾をいくらぶっ放しても反撃をする事は無い―
―都合の良いサンドバックとして未来永劫殴られてくれるとてもいい存在―
そう敵に思わせてしまうという事なのだ。
やるのであれば徹底的に「解らせてやらなくてはいけない」
譲歩するのはその後でも良いのだ。
私は動かない。
アルフィンを止めない。
今目の前のデルフィナス王国の「艦隊」がボロボロに焼け落ちようとも構わない。
むしろそれだけで済むのであればこれからのデルフィナス王国との交渉事は、
よりこちらに有利に働かせる事も出来るとすら考えて今から行われる、
一方的な反撃をただ見続けるのみなのだ。
「さて、始めます」
アルフィンのその宣言で伝令用員が伝達の準備を始めるのだ。
「敵の足は限りなく遅くなりました。
狙うのは湾内の出口に一番近い船を先頭に3隻を始めに沈めます。
良く燃える様にして差し上げて、海面に炎の壁を作ってしまいましょう」
それがアルフィンが出した初弾のターゲットだったのだ。
あくまで殲滅させる。逃がして返さない。
より攻撃できる機会が多くなるようにしながら…
より多くの弾を着弾させる為にターゲットを選定したとしか思えない。
発砲するのは屋敷に一番近い場所に設置されている高射砲10門。
もちろん着弾地点は観測できないけれど、
内湾部を取り囲むように設置された観測所から送られてくる船舶の位置を、
高射砲の発射用員へと淡々と伝えていく作業が続けたれた。
一刻も早く打つのではなくて、3つの高射砲を1グループとして、
多種目の弾薬を船舶に打ち込むと言う方法を取るみたいだった、
それは敵を一方的に殴れると思っていた帆船としては、
最大級の「奇襲」となる事は確実で砲撃用員指揮者に持たせた時計と、
時間を合わせて砲で一斉射と相成った。
動かないし、動けない的だ。
安心安全と思っていた所への一撃がどう作用するのか。
同時にどれだけの攻撃効果があるのかはやって見なくては解らない。
「予定発射時刻カウントダウン」
「3」
「2」
「1」
「今」
―ドゴン―
ほぼ同時に鳴り響く発射音。
一番この場所から近い投射砲からの発射なのだ。
ビリビリとその砲撃の衝撃で窓枠が震えたのだ。
ジジジジジと木枠の中に嵌ったガラスが振動して音を鳴らす。
「一部だけでも2重窓にするべきかしらね」
「その方が無難だとリチェルチェは考えます」
ギネヴィアはその方の発射音より震える窓の方が気になっているみたいだった、
投射兵器ゆえその着弾までは当然時間もかかる。
けれど発射から着弾までの時間はおおよそ計算済なのだ。
時計を見続ける連絡要員がその着弾までの時間をカウントし始めるのだった。
「着弾まであと…3・2・1・今」
ズズンーー。
と大きな音が鳴り響くのだけれど…
着弾した結果をリアルタイムで知る事が出来る物は今の所、
この場所にはないのだった。
けれどその響くような轟音を聞いてから一分後には新しい連絡要員が、
部屋に入りテーブルの駒を動かす要員にその結果を伝えたのだ。
「観測結果暫定ですが…届きました」
テーブルの上に置かれた半島出口に一番近い3隻の船は、
そのままテーブルから撤去されたのだった。
「3隻とも命中。
船体は大破断裂です。
少なく見積もっても砲撃する事はもう出来ないでしょう。
それぞれに沈没が始まっています。
戦隊をへし折る様な形となっています。
特殊弾頭では威力が高すぎます」
「解った。
しばし観測を続けよ。
もう少し詳細な状態が欲しい」
僅か10発の弾丸ではあったが「直撃」したのだ。
船体を貫通して水面に勢いよく着弾すればその叩きつけられた、
水が起こす衝撃破だけでも木造船の船体の要となる竜骨に大ダメージを与えて、
致命的なダメージを与えたれる事だけは確か。
至近距離での打ち合いしか想定していない船に頭上から叩き落とされる、
音速を越えて飛翔する弾丸は木造の甲板など軽く貫通して船底に穴を開け、
その開けた瞬間に水面を大きく叩き衝撃で船の外装を内側から破壊する。
船室の一番深い場所で爆弾が爆発するような物なのだ。
一発でも当たれば普通に沈むのよね。
それを3発ぶち込まれたら海面が爆発した威力で船は問答無用で、
持ち上がり船はなすすべもなくへし折れるのだ。
そして仕上げとしてばらっばらっになった三隻の所に空中炸裂弾によって、
鉄の雨が降るのだ。
それは乗組員を確実に減らすために広範囲にばら撒かれ、
確実に生き残りを減らす追い打ちの一撃となるのだった。
その光景を近くで直視して自身が耐えられるかどうかと、
問われると何とも言えない。
ただテーブルの地図の上の駒が3つ消失したと表現される、
その先にはそう言った風景が広がっているはずなのだ。
済んでしまった事だけれど、3隻が沈み粉々に粉砕されたのだから、
一隻平均で約50人程度三隻で150人が海の藻屑に消えた事になる。
そう考えるとこれで良かったのだろうかとまた悩む事になりそうだった。
「追加報告入ります」
それは先程暫定的に行われた3隻の状態が「確定」した事の報告だった。
おびただしい破片が海に散乱した事だろうとは思う。
けれどその報告を受けても喜ぶ者もいなければ、
逆に悲しむ人ももいなかったのだ。
テーブルの上の駒は動かない。
ただ、淡々と次の指示をアルフィンは出していくのだった。
港湾施設に向かって砲撃を続けている船舶達は後方の惨劇に気付けない。
それどころか超常現象的に港に撃った砲撃が見えなくなる事が、
信じられない様で、更なる砲撃を繰り返しているみたいだった。
接岸を目的として港に近づかれては、次の「安全」な砲撃が出来なくなると、
考えるアルフィン既に次弾の発射を支持するしかないのだ。
そして、次の射撃こそ、悪夢の展開となる事が確実な…
容赦のない一劇となるのである。
「続いて調子に乗って港湾部にバカスカ砲弾をいる10隻を纏めてやる。
前砲台に各々の目標となるターゲット座標を知らせよ。
「敵」がこれ以上港に近づこうとして動く事を許すな。
初段発射のタイミングは2分後ターゲットの割り振りは左から…」
アルフィンが各砲台から効率よく砲弾を叩き込めるように伝令を飛ばしていく。
それはデルフィナス王国に対する致命的なダメージを与え、
故国に帰れなくする為の一撃となるのである。
けれど、その砲撃を辞めよと指示をするようなご慈悲を与えてくれるような、
判断をしてくれそうな人はもうこの場にはいなかったのだ。
半島内に設置してあるすべての投射砲から降りそそぐその砲撃は、
同時発射を狙った砲撃で時間合わせをした後、
無慈悲な発射時間を迎えてしまったのだった。
「時間です」
伝令係のその言葉を皮切りにまたビリビリと窓枠が振動する音がして、
各方面から発射された弾丸は前列に並んだ10隻の大型帆船を完全に、
飲み込んで問答無用で粉砕し尽したのだった。
水面に打ち付ける砲撃だけでも帆船はグラグラと揺れ、
そしておそらくその初弾だけで、ほとんどの船がバラバラになる事は、
先に後ろに打ち込んだ弾丸の事を考えても明かな状態。
恐らく無数に立っているであろう水柱。
おそらく生きている人がいるとは思えない。
けれどそうだったとしても追撃用の散弾をばら撒く事当然辞めないし、
なにより船を壊された生き残りが上陸する事を考えたらだた1人だって、
生かしておくわけにはいかない。
遺恨を残さない為にもここで完膚なきまでに叩き壊してしまうべきなのだ。
残るのは旗艦と生き残りの帆船一隻。
既に離脱する事が不可能な事も理解できているでしょう。
彼等が生き残る道はただ一つだけなのだ。
「これで終りね」
「案外あっけなかったわね」
「隠し玉の一つでもあるかと思っていたけれど…」
「面倒事が増えるのは嫌よ」
艦列の中心部。
守られる位置で戦闘状況を観測していたと思われる。
攻撃に参加していないのに他の船より大きな帆船。
その時点で旗艦だという立場であることになんとなく察しがついていた。
けれどその旗艦がどんな伝令を出そうとしても既に遅いのだ。
もう伝令をするさ着は随伴艦の一隻しかないのだから。
既に半島の出口へは一番最初に沈められた船の残骸の影響で航行する事は、
当然できない。
出来たとしても船の外装を痛めてしまい外洋に出るころには船底はボロボロ、
どれだけ母国まで距離があるのか解らないけれど、
普通に考えたら外洋上で沈没が良い所だろう。
旗艦にせよ随伴艦にせよ変わらない。
「観測結果を待って残り2隻に砲弾を叩き込んで、
止めを刺して終わりにします」
アルフィンはそれが決定事項と言わんばかりに宣下したのだった。
けれど半島全域を使った全周囲から一斉射はそれだけ多くの水柱を作り上げた。
それは湾内にだけ雨が降ったかのような嵐が巻き起こされたような、
そんなイメージだったのだ。
観測所からの正確な位置が水しぶきで視界を屈折させ、
正確な距離が解りにくい状態へとへんかしていたのだ。
それでもおおよその地点は観測できている。
だからこそ全員が全員次の斉射で終わると言う、
結果だけを待つ場となりそうだったのだ。
次の報告を聞くまでは。




