テスト前
家に帰ってからまたもやテスト勉強が始まる。
明日がテストなだけあって内容は結構頭の中に入っている。
「もう完璧だね」
凛花がそう言い後ろにあったベッドに腰かける。
一応この部屋は僕の部屋なんだけどな・・・・・・
「そういえば自分の勉強は?」
ずっと付きっきりで僕の勉強を見ていた凛花は勉強していたのか今更ながら気になった。
「教えることで覚えたりもするからね」
それは確かによく聞くけど本当にそうなのか疑問に思うことがある。
教えることはつまり自分の知識を教えることと一緒。そのため新しいことは覚えられない。
「その顔、疑ってるね?じゃあ、今度のテストで私が僚太くんよりも総合点が低かったら今までの何でもお願いできる券を無効にしてあげる」
それはありがたいが、そこまで言うということは自信があるのだろう。
今回のテストは古典、現国、数学、科学、生物、英語、論表、公共、情報、保体の10科目。
芸術系はテストがない。そういえばまだ映画が途中だったな。
それは良いとして時間割りは一日2時間ずつで来週の火曜日まで続く。
2時間した後は部活動があったりするが、読書部はそこも休みとなっていた。
1日2時間テストを受けて帰ることが出来るというのがこの高校独自のものなのか他の高校も同じなのかは知らないが、少なからず僕の通っていた中学校では違った。
中間考査の時にその日程を見た日には歓喜したものだ。
早く帰ることが出来るということはそれだけゲームや読書の時間が増えることに直結していたためだ。
今回は帰ってからも勉強となりそうだが。
◆
その日はそれ以降テスト勉強をすることはなく、夕食を食べ終わった後は早めに寝たのだった。
そして、翌朝。いつもと同じ時間に目覚めた。
それからいつも通り部屋を出てリビングに向かう。
「おはよう、僚太くん」
いつもと同じ挨拶にいつもと同じように挨拶を返す。
そこから見て分かる通り彼は特段慌てることなく平常運転なことが分かる。
それは自信からくる余裕だろう。
自信とは色々なものから得られるものだ。
一番分かりやすい例でいくと今までの経験だ。
僚太で言うと入試の結果だ。
そして、今までの努力もまたそれを後押しすることになる。
それに、それを知っている人物がいるというのも大きいだろう。
そして、その姿を見て凛花も安心していた。
あの契約書、実はあの後すぐに取り消されているのだが、僚太はそれを知らない。
それが彼にプレッシャーを与えて思わぬミスを誘ってしまうのではないかと考えていた。
また、長年一緒に暮らしてきた美奈子さんの僚太への理解度をひしひしと感じていた。
それに密かに憧れを抱いていた。