テスト前日
久しぶりにまた、この夢を見る気がする。
土管の中は暖かくなり始めたこの季節には少し寒さを感じる温度だった。
「りんちゃん?」
土管の中に入り立ち止まったままのりんちゃんに僚太は不思議そうに話しかける。
「りょうちゃんはさ、ゆめある?」
「ゆめ?ゆめか~」
唐突なその問いに僚太は詰まってしまう。
彼には彼の年代には特有のヒーローなどの夢はなく、更には格好よさから警察官や消防士といった夢がなかった。
「ないの?わたしはさっきできた」
「なに?」
「りょうちゃんのおよめさんになること」
そう言ってにっこり笑う彼女からは先程の悲しみはほとんど感じられなくなっていた。
「ぼくのゆめはりんちゃんとけっこんすること」
そう言って二人で笑いあった。
◆
自分があまりにも恥ずかしいことを言っていたため、まるで悪夢から覚めたかのようにバサッと上半身を起こす。
最近今までよりも詳しく夢を見ている気がする。
そんなことを思いながら時計を見るといつもよりほんの少し早かった。
起き方が起き方だったために目が完全に覚めていた。
準備を済ませ部屋を出てリビングへ向かう。
「おはよう、僚太くん」
お馴染みになってきたこの挨拶。
「おはよう」
そう返しいつものラップが巻かれた朝食を食べ始める。
普段はやはり休みが続いた後の平日はテンションが下がるものだが、今日に限ってはそんなことはなかった。その原因は僚太自身もわかっていない。
リフレッシュに旅行に行ったことか、はたまた昨日も勉強しているためさほど学校を嫌と思っていないのか、あの夢を見たからか。候補が3つもありどれがその原因なのかわからない。
◆
その日の学校での授業はテスト前日ということもありほとんどの授業は自習という形でテスト勉強をするという内容だった。
その際机を動かして良いと言われたときには毎回凛花が隣に席を付けていた。
と言っても学校では教えてもらうことはなくただ、隣で勉強しているだけ。
その様子はもう長年付き合っているカップルのようだったと見た全員が思っていた。
◆
裏門近くの自転車置き場で待ち合わせ、貴史を加えて公園に来ているであろう迎えの車に向かう。
「そういえば、最近二人の仲が良いって噂が流れ始めてるよ」
思い出したかのようなその発言は僕が考えないようにしていたものだった。
「実際仲良いですからね」
この関係は仲が良いと言えるのか疑問ではあるが、そういうことにしておこう。
仲が良くないと一緒に旅行にいかないし。