日直 3
その後、結局朝の時間には書くことが出来ず朝読書の時間となった。
◆
チャイムから少し遅れて山根先生が入ってくる。
朝読書が終わると次はショートホームルームだ。
「礼」
週一だった朝読書が毎日に変更になってからショートホームルームの始まりの挨拶は座礼となった。
「テスト期間中、勉強時間のアンケートをタブレットで答えておくように。以上、後は好きにして良いぞ」
山根先生はいつもてきぱきとショートホームルームを終わらし僕たちに時間をくれる。
その時間にその日の宿題をやっている人もいるためありがたく思っている生徒は多そうである。
僕もありがたいと思うがそれは読書が出来るからであって宿題をしてきてない訳ではない。
まあ、答えを見ながらやっている時点で真面目に宿題をしていると言えないのは重々理解しているが。
今日はタブレットで勉強時間のアンケートに答えることにした。
150分と打ち込みそれを提出する。
これは事実である。昨日は夕食までの間ずっと勉強させられたためだ。
その事を思い出すと精神的にダメージを受けるため思考を切り替える。
まだ後3分位余っているので日誌を取り出す。
結局最近のトピックスにはどこまでが予告でどこからがネタバレなのかというどうでもいいことを書いておいた。書く内容が決まると以外にあっさり終わるもので一時間目が始まる前の10分休憩の途中に書き終えることが出来た。
ここからは特に何もなかったからダイジェストでいきます。
一時間目、開始5分で眠くなり始め10分経つ頃にはもう寝ていた気がするが時々隣の凛花に起こされた。
二時間目、いつものように先生から「た~な~か~」と言われた。
三時間目、今日はパソコン室で実技の練習だった。ちなみに森崎先生という白髪の男の先生が担当だ。
四時間目、水地先生の声はやっぱり聞き取りやすかった。
昼休み、相変わらず凛花と食べることになった。
掃除、ボーッとしながら手だけを動かした。
そうして五時間目の今に至る。
現在は芸術の時間である。芸術は音楽と美術の選択制で僕は音楽を選択している。
そして、これはたまたまだろうが凛花も音楽を選択している。
なにしろ入学式よりも前にあった入学者説明会の時にどちらにするか決めなければいけないからだ。
僕が音楽を選択した理由だが、声で感情がわかる能力があるためである。
歌を歌うのも絵を描くのも苦手だが、観賞という点においてこの能力は音楽には有利になることがある。
本当のプロというものは歌詞にあった感情で歌っているためそれを感じることが出来る。
しかし、何か別の感情が入り交じっていることも多々ある。
僚太が聞いてきた中で一番酷かったのは明るい曲を歌っているにも関わらず感情はダルいというもの。
その落差がすごくその曲を最後まで聞くことができなかった。
授業やテストでテレビ番組のようなどちらがプロの歌手でしょう?というのはないがその能力があることで何か有利になる可能性がある音楽を選んだのである。
◆
「テスト期間中は授業を進めません。自習と映画どっちが良いですか?」
音楽の先生である小見田先生がそう言う。彼女はスラッとした体型でスーツを着てメガネをかけたら秘書に見えそうな人である。
内面的に見れば明るくマイペースといった感じなため秘書ではないので外見だけだ。
「自習が良い人?」
片手を挙げながらそう問うが誰も手を挙げない。
「じゃあ、映画にしましょう。冒険、恋愛、ホラーがあるけどどれにする?」
またもや多数決が始まるが、以外にもホラーとなった。
苦手な人もいると思うためよくホラーになったものだと思う。
「好きに移動して良いですよ」
その声に皆が思い思いに移動し始める。
僕は元の場所を動かなかったが、当然のごとく凛花は僕の隣に来た。
凛花は先程ホラーに手を挙げていたため平気なのだろう。
こうして暗くなった音楽教室で良い音響のもとホラー映画の幕が上がった。