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お手伝い

家に帰ると当然のように店のエプロンを着させられる。

毎週この日は早く帰るため店の手伝いを半強制的にさせられているのである。

先週は大会が近いらしく貴史の部活があったためしていない。

どうやら土曜日が大会だったらしく悪あがきで貴史に連絡し遊ぶ予定をというのは無理な話だった。

追い詰められていたためそこまで考え付かず本気で連絡しようとしていた。

月曜日に部活のメンバーで食べに行くと言っていたのはこの大会があったからだろう。

貴史も1、2勝は出来たらしいが県大会には進めなかったらしい。

僕としては上の学年がいる中で一回でも勝てたのなら凄いと思うが本人はその結果に納得していない様子だった。


凛花も隣で制服の上からエプロンを着ていた。

「制服で良いのか?」

結構アウトに近いことをしている気がするため学校にバレないようにするべきではと考えたのだ。

「店では友達の家のお店でアルバイトの練習をしているということにしてるから」

アルバイトの練習って・・・・・・

そうは思ったが代案もないため何も言わないことにした。



「今日は抜けている所に本を足していってくれ」

「はい」

凛花は元気よく返事をするが僕はすぐに取りかかった。

この手の仕事はその仕事が終わり次第終了となる可能性が非常に高い。

だからこそいかに素早く文句を言われない程度に丁寧にするかが求められる。

誇りはないのかと言われそうだが強制的にやっていることのため、そういわれる筋合いはないと思っている。子供の頃からやっているため早く終わらそうとしたところで出来映えはほとんど変わらない。さすがに丁寧にやったのと比べると差はあるだろうが普通にやればこの程度だろうという感じには仕上がるのだ。


少し年代物の赤に塗装された鉄製、キャスター付きの本棚にある程度同じような系統の本を詰め込みそれを押して詰め込んだ本の系統があるような場所に移動する。

年代物で赤の塗装が剥げかけているためあまり触りたくはないのだがこれを使わなければ圧倒的に往復回数が増え、格段に遅くなってしまうのだ。


早速作業に取り掛かり始めるが後ろからガサゴソと音が聞こえ始める。

この時間帯に人は中々来ないため気になり振り向くと凛花だった。

「何で同じところをするんだ?」

効率を考えると違う場所でやるべきである。

「ちゃんとやるように見張っておいてって頼まれたんだ」

僕の信用無さすぎないか?早く終わらせようとはしているが雑とは言われない程度にはやっていたはずだ。

考えるのはやめて作業に戻る。



結局時間いっぱい働かされ2階の住居スペースに上がった。

外からも入れるが店で働いていたため中からそのまま2階に上がった。

そして、自分の部屋に直行しベッドに寝転びくつろぐ。

あの後は特に会話もなく貴史の言葉が脳内でずっと繰り返されていた。

あの理由を言い訳にしていないと断言できるのか自分でも少し怪しい気がしている。

しかし、あの記憶があったからこそ立ち直れたと言っても過言ではない位助けられているのだ。

だからその約束もあの子にまた会うまでは叶えられる状態でいなければならないと義務的に感じている部分もある。ただし、あれが初恋だったのではないかと僚太は考えている。

幼かったがそれでもあの感覚をそれ以降感じたことがない。いや、時々凛花にも若干感じているがそれはあの子と重なって見えることがあるからだと思う。



夕食の時。

「そうだ。凛花ちゃん明日からあれが始まるでしょ?だから、お店の仕事はなしで良いわよ」

「良いんですか?」

「ええ、その代わりに一つ頼みたいことがあるんだけど・・・・・・」

そう言うとお母さんは凛花の耳元に口を近づけ手で口の動きを見られないようにしながら話し始めた。

明日から何かあったかなと思いつつもそこまで警戒することかとも思ってしまう。

僕にも当然お父さんにも口の動きで何をしゃべっているのかを特定する技術はない。

「わかりました」

お母さんの話が終わったのか凛花がそう返事を言うとお母さんはとても嬉しそうだった。

何を頼んだんだ?

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