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日直

追いかけていくとまず向かった先は職員室だった。

日誌は職員室にあるので当然と言えば当然なのだが、そうなると他の仕事もしてなかったのではないだろうかと考えてしまう。と言っても黒板消しと移動教室の際に電気を消すなど簡単なものばかりだが。

急いでいる素振りを見せながらも綺麗なお辞儀をして職員室から出てきた凛花にその事を問う。

「うん、すっかり忘れてた」

それが彼女の回答であった。忘れていたにも関わらず黒板が毎時間の始めには綺麗になっていたのは彼女の人望からだろう。まさか、彼女が日直の仕事を忘れているわけはないと皆が考えたため凛花に指摘が回らなかったとも言えるが。



幸い教室の鍵は閉まっていなかったため自教室に入り自分達の机に座る。

「ごめん、お腹痛いからトイレ行ってくる」

荷物を置いた貴史がそう言い駆け出した。その言葉に焦りを感じなかったのに走っていったことを疑問に思う。

その間にも凛花は準備をしていたらしく机には日誌と筆箱、出されたシャーペンと消ゴムが並んでいる。

ペラペラと日誌をめくっていきまだ何も書き込まれていないページを開く。

そして、焦るようにペンを走らせ始めた。


僕はとりあえずやることがないため本当はいけないのだがスマホを開く。

親にメールを送り少し遅れるということを伝えておいた。

「親に伝えといたから急がなくても良いよ」

「うん、ありがとう。やっぱり優しいね」

「やっぱり?」

「なんでもない」

そう笑いながら言うが真意はわからない。僕の能力でもわからないこともある。

例えば先程は感謝という気持ちはわかったがそれ以上はわからない。

そういうところはもどかしいが知りたくないところまで知ることが少ないと考えるとこの方が良かったのかもしれない。


少し経ち凛花のペンが止まる。

「あれ?4時間目なんだったっけ?」

「体育」

「そうだった、そうだった」

そう言いながらまたペンを走らせ始める。


そして、また少し経ち書けたというので職員室に提出してくるように言い僕はトイレの方に向かった。

1組の教室は他の組と比べてトイレまでの距離が長い。その廊下を足早に進んでいきトイレの扉を開ける。

案の定そこには何もせず手洗い場の前に突っ立っている貴史がいた。

「もう、終わった?」

「終わったけど、何でトイレに来たんだ?」

「やっぱり僚太に嘘をつくのは難しいな」

話を曖昧にしようとした彼を真っ直ぐに見る。貴史がその視線に弱いことを知っていたためだ。

「単刀直入で聞くけど、立花さんのことをどう思ってる?」

「家のお手伝いするなんて変わってるなと・・・」

「そうじゃない。告白をされたんだろう?」

「な、何でそれを?」

「やっぱりそうだったか」

・・・・・・嵌められた?

しかし、その問いに一つの迷いもなく確信していたため本当に知っていたのかと思ってしまった。

「それで、どう思ってるんだ?」

「いや、そりゃあ多少なりとも意識はするけど・・・・・・」

「するけど?」

「僕にはあの約束があるから」

親友といえる貴史にはそのとある約束を話したことがある。

「まあ、そう思うのは良いけど、それを都合の良い理由に使うなよ」

「そんなこと・・・・・・」

「はたから見ればそう見えるぞ。その約束も結構昔のものだろ?もう向こうは覚えてないかもしれないのに」

「それでも、その記憶に救われたから」

「・・・・・・」

その言葉に貴史も言葉を返せなくなり夜の海のような静かで冷たい沈黙がトイレに漂う。


その沈黙を破ったのはスマホの通知音だった。

先程メールを送る際に電源を付けっぱなしにしていたのだ。

先生がいたら即注意を受けるだろうが今回ばかりは先程の沈黙を打ち破り雰囲気を軟化してくれたため助かったという印象が強かった。



それから1組教室に戻り荷物を取り、いつもの小さな公園に向かうべく裏門を出た。


公園に着くとうちの車が台だけ止まり、僕たちのことを待っていた。

3人が車に乗り込むと車はすぐに出発した。遅れた事情はメールで伝えていたため特になにか言われることもなかった。

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