新たな目標
「楽しかった?」
「はい、とっても」
凛花はその流れでお土産を渡していた。
すぐに取り出せるように準備していたのだろうか。
ちなみにお土産は同じ場所で買ったのもあり、同じ袋に入っているため僕から更に渡す必要はない。
僕が持っていても良かったのだが、というより僕が持つべきだったのだろうが、どう渡せば良いのかよくわからなかった。
基本的に人とコミュニケーションを取るのを避けていたからこういうイレギュラーな時の対処方が簡単には思い付かないのだ。
小、中学校の時の修学旅行の時は荷物を出すついでにお土産として買ったものをテーブルの上に置いていたため手渡ししたことはなかった。
凛花がしれっと手渡ししているのを見て、流石だなと思う。
ただ、僕に出来るとは思えないし、無理して真似しようとも思わない。
◆
その後、僕は疲れていたのもあり夕食やお風呂等もろもろ済ませた後部屋に戻ってきていた。
思えば1人になる時間は久しぶりだ。
予定ではそうはならないはずだったのだが、ホテルで手違いがあって豪華な2人部屋となった事で旅行中1人になることは数少なかった。
そうなったからこそ、今度こそ気持ちの整理に区切りをつけようと勝手に頭の中が動き出す。
凛花=りんちゃんはほとんど確定だ。
そもそも、咄嗟に気づいていないように振る舞ったが、それは正しかったのだろうか。
あの場で打ち明けて、ほとんど確定のところを確定にしておくべきだっただろうか。
あの場で言うチャンスを逃している時点で既にその事は打ち明けづらくなっている。
さらに、これからどうするか、だ。
旅行中というイレギュラーなタイミングで知ってしまったためその時点での判断は判断力が鈍っている可能性がある。
もともと、旅行なんて行かないため少しばかりワクワクしていたのだ。
もちろん、声から悪い感情を感じることもあったが、それを上回るほどの楽しさがあった。
だからこそ浮かれ気分であったのも否めない。
そう思っていたが、結局今考えても正解が何なのか分からない。
謎の結婚式の夢を同時に見ていたという不思議な現象もあったし、意図せず突然涙が出てきた事もあった。
一気に考えると頭がパンクしそうなほどの情報量と衝撃だ。
だから、全てを一旦置いておいて一番初めに戻ることにした。
まずは凛花=りんちゃんをほぼ確定から確定にする。
どうやって探るかを真剣に考え始めていた。