帰宅
話ながら歩いていたためつい歩くスピードが遅くなり、薄暗かったのが今では暗くなってきていた。
「こんなに暗いとさ、肝試しできそうだよね」
「その言い方だと毎夜出来るよ?」
旅行を終えて凛花は凄くボケることが多くなった気がする。
「僚太ってリアルのホラーは苦手なんでしょ?」
「苦手とは言ってなかった気がするけど、肝試しとかを進んですることはないかな」
そういえば、テスト前に音楽の時間に見てた映画の続きは時間割り変更で見れてないんだよな。
ちょうどその時に、ホラーがどうとかという話をしたのは覚えている。
「じゃあ、今度お化け屋敷行ってみる?」
「なんでそうなった?」
「吊り橋効果?」
「そこでなんで疑問系?」
行く前に吊り橋効果狙いだと言ってしまう辺りは凛花らしいが、それに疑問系がつく理由はわからなかった。
「吊り橋効果を狙うなって言われてたから」
「狙うなとまでは言ってなくない?」
記憶は定かではないが、期待するな的なことは言った気がしなくもないが、狙うなとは言ってない。
「じゃあ、今週末に行こう」
決定が早い。
「別に良いけど、引っ越しの方はどうなの?」
気になっていて中々聞くことが出来なかった質問のチャンスは唐突にやって来た。
この流れで聞けなかったら、おそらく自分から聞けてはいなかっただろう。
「実はさ、後荷物を運ぶだけなんだよね」
「じゃあ、もうすぐ引っ越すんだ」
もう少し早く凛花がりんちゃんだと気がついていれば、今の関係も違ったのだろうかと思ってしまう。
「そうだよ。寂しいんでしょ?」
「ちょっとね」
嘘だ。
大分寂しくなるだろうことは予想できた。
別に元の生活に戻るだけではあるが、凛花が来てからはとても濃い日々だった。
それが薄くなるのだからとても寂しく感じるだろう。
それに、ずっと会いたかった人が既に近くにいたのだ。
知った直後に離れてしまうのは本当に寂しい。
「あれ?否定しないの?」
「いくらなんでもそれで寂しいと思わない人と旅行には行かないから」
「へえー」
「ほら、家に着いたよ」
丁度良いタイミングで家の前に到着したため逃げるように入っていった。
◆
「ただいま」
「ただいま」
凛花も最近ではただいまと言って家に帰ってきていた。
初めはですを着けていたのだが、次第とそれはなくなった。
「おかえり」
「おかえりなさい」
お母さんがとてもご機嫌そうだったのが気になりはするが、無事に家に帰ってこれて一安心するのだった。