過保護 2
そうして、僕たちは最寄りの駅まで帰ってきた。
「やっぱり僚太はケチだよ」
ただ、凛花は不満げである。
これは先程聞いたのだが、どうやら帰りの便が満席になり、もう一泊することを狙っていたらしい。
だから、早めに着いたから早めに帰ろうと言わなかったわけだ。
「それで野宿になるよりは良いでしょ」
「一応あのホテルの別の部屋に空き部屋があるのは確認してたんだけどね」
結構用意周到だったようだ。
それなら、なぜもう少し引き留めなかったのかと思ったが、将棋の誘惑に負けたらしい。
本当に将棋にハマっているようだ。
しかし、そうなるとなぜ簡単に寝たのかという疑問が出てくるが、単純に睡魔に負けたそうである。
僕が言わなくても寝ていたのかもしれない。
「って、将棋の方はケチじゃないでしょ」
危うく、将棋の方までケチ扱いされるところだった。
ホテルの方は用意周到だったからいいとして、将棋の方は凛花を寝させることが目的だったのだ。
ケチと言われるのは違うだろう。
「ケチじゃないなら何なの?」
「過保護」
「あれ?認めるんだ」
僕がすんなり過保護だと認めたことで凛花は拍子抜けしたという感じだった。
よくよく考えれば、人の睡眠時間を気にして寝させるなんてそれなりに仲が良い人がすることだ。
凛花と関わりだしてから所詮まだ2ヶ月弱である。
2ヶ月弱と言うと、長く感じるかもしれないが意外とそうでもない。
ボーっと授業を受けて、ボーっと生活していれば2ヶ月弱なんて簡単に過ぎていく。
それにその半分以上が夏休みであったために、体感としてはさらに短い期間である。
そして、今の関係はよく分からない関係だ。
一番近いのは両片想いだろうか。
しかし、僕は凛花の好意を知ってしまっているから、当てはまらないのも確かだ。
かといって、今の関係を言葉に表すとしたらどう表すのか分からない。
それもこれも、凛花がりんちゃんであると見抜けなかった僕が悪い。
もし、初めに気がついていれば、今ごろ凛花の睡眠時間を気にして寝かせることをしても不自然じゃない関係になっていただろう。
そんな関係になっていないのにしたのだからそれは過保護の領域に入るのかもしれない。
「ケチじゃないだけマシでしょ」
「ラップ?」
「韻は踏んでないでしょ」
凛花が急にボケることで僚太はツッコミにまわるのだった。