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非日常は中々終わらない 2

ようやくデートが終わった、そう思っていた。

しかし、まだ終わっていなかった。

帰りの電車に乗ったところまでは良かった。行きは密着していた凛花も帰りは普通に隣に座っていた。

ここまでだったら正真正銘終わっていただろう。

最後の乗り継ぎを終えこれから最寄りの駅に向かう電車で凛花は寝てしまい僕にもたれ掛かってきた。

行きとは違い、本当に無防備な状態で密着しているため行きの時よりも緊張してしまう。

彼女はずっとはしゃいでいたから疲れたのだなと思うがそれにしても僕に気を許しすぎだと思う。

駅に着くまでの数分間がとても長く感じたのだった。


苦労は駅に着いてからも続いた。どうやって起こすべきなのかという問題があった。

読書好きの彼にはキスをして起こすという物語にありがちなものが瞬時に浮かんだが脳内ですぐに却下する。肩を揺するのが正解なのか、はたまた声をかけるのが正解なのか、他にも方法があるのか。

幸い、この駅はすぐ出発することはないので考える時間はあった。

結局肩を揺することにする。


「う、うん?」

すぐに目を覚ましてくれた。ちょっとホッとした。

「着いたよ」

「あ、ごめん」

すぐに状況を理解したのか立ち上がり電車を出た。僕もそれについて出る。

駅を出ると急に帰ってきたなという実感がわいてきた。それと共にどこか寂しさも感じている。

何だかんだ言っていたが無自覚の内に楽しんでいたのかもしれない。

突如凛花が振り返り、

「明日も行ったり・・・する?」

一瞬心が読まれたのではないかと戦慄するがそうではなく純粋にそう聞いているのは表情でわかった。

「一日の約束だろ?」

こう言ったのには二つの理由があった。

一つ目はさすがに二日連続で外出するのはしんどいからである。

人混みが苦手な僚太にとって人が混む場所に行くだけで精神的に疲れてしまう。

人見知りなのもあり全く知らない他人に囲まれているのはすごく拘束感があるのだ。

二つ目に明日の15時に用事があったためだ。

「え~、残念・・・・・・・・・今日は楽しんでくれた?」

ちょっと残念そうにしてから話を今日のことに戻す凛花。

「まあ、それなりに」

それを聞いた凛花は

「それは良かった」

とにっこり笑った。その笑顔はこちらまでつられて笑顔にさせるだけの力があるように感じた。



家に帰ると僕も凛花も自分の部屋へ直行した。

僕はベッドで横になりたかったから。凛花は買ったものやクレーンゲームの景品、持っていっていた肩掛けの鞄を置きに行くために。



僕はどうやら寝落ちしていたらしい。帰ってきたときはまだ窓からオレンジ色の光がさしていたがそれはなくなり外は暗くなっている。

夕飯は基本家族揃って食べるためまだ夕食の時間ではないのだろう。



僚太が起きた頃凛花と美奈子は台所で夕食の準備をしていた。

「今日は上手くやれたの?」

今日のデートのために一枚噛んでいた美奈子はどうだったのか気になっていた。

「はい、お陰様で」

「ということはりょうは・・・・・・」

「それはまだです」

「そう・・・」

途中期待を抱いた美奈子だったが結果を聞き残念そうになる。

「それでもりょうちゃんはりょうちゃんなんだって再確認できましたから・・・・・・それで良いんです」

それは自分に言い聞かせているようだった。

「そうだ、その呼び方で呼べば気づくんじゃない?」

いかにも名案を思い付いたとばかりに声が明るくなる美奈子。

「これで気づいて貰っても意味がないんです。それにこう呼ぶのは怖いですし」

そんな会話をしながらも夕食の準備は着々と進んでいた。



今日の夕食は最近と少し違っていた。料理というより僕が会話に入る回数が格段に増えている。

そう思いいたり僕に話が回ってくるまでのルートを確認すると見事なことにほとんど凛花から話を振られている。

これもアピールの一つなんだろうか?

そう考えているとお父さんが突然とある爆弾を投げてきた。

もちろん本物ではなく発言の内容がそうだっただけだ。

「二人が結婚したらって最近考えてるんだよな」

思わず口の中で咀嚼中だったものを飲み込んでしまいむせてしまった。

「突然すぎよ?でも、凛花ちゃんなら文句は言わないけど」

お母さんはお父さんを嗜めつつも賛成的な意見を言う。

改めて考えてみるが家族の前で結婚したらと考えられるような行動をとっていただろうか。

記憶の中ではない。もしかすると凛花も家族の前では遠慮してくれていたのかもしれない。

「多分そんなことないって」

多分と付けたことに自分自身で驚いた。今までであれば絶対にないと断言できたはずだった。

そう考えている間お母さんがお父さんを睨んでいたこと、そしてそれを見て困っている様子の凛花に気づかなかった。

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