昼寝
「じゃあ、次のお願いは何にしようかな?」
熱なんてないんじゃないかと思える明るさである。
これは無理をしているのかもしれない。
「ないなら寝たら良いよ。昼寝に丁度良い時間だし」
普段昼寝をしないため丁度良いのかどうかは分からないが、そういうことにして押しきろう。
「それもそうだね。じゃあ、僚太も昼寝して」
「分かった」
じゃあと言われたときには同じベッドでと言われるのかと思ったが、流石にそんなことはなかった。
風邪を移さないように配慮したのかもしれない。
風邪に助けられた。
・・・・・・そもそも、風邪のせいでこうなっているのだからそんなことはなかった。
◆
一応16時にスマホのアラームが鳴るようにセットし、ベッドに横になる。
横になると、凛花はこちらを向いており、
「おやすみ」
と笑顔で言って目を閉じた。
その目を閉じている顔が恋愛漫画等によく出てくるキスを待ってる顔に見えて、首を振る。
ただ、凛花は無理をしていたから疲れていて、そのまま眠ってしまったのだ。
決して、キスを待ってる訳じゃないし、僕に好意があったとしてもキスになると話は別になってくるかもしれない。
観覧車の時だって、キスをされたのは頬である。
・・・・・・・・・そもそも、風邪を移さないために配慮した可能性があるのにキスをするなんてその配慮を無駄にしている。
そして、そんなことをする勇気なんて一欠片もない。
上がりかけの心拍数を抑えるためにゆっくり呼吸をすることを意識しつつ、いつの間にか眠りについていた。
◆
白いタキシードを着た僕は誰かに着いていっていた。
その誰かとは別に怪しそうな人物であるわけではなく、この建物で働いている人であろうことは何となく分かった。
これはおそらく前回の夢の続きである。
夢と理解しても続く夢を見るのはあの時の夢を見るとき以外は初めてだ。
案内してくれていた女性は立ち止まると近くの扉にノックをした。
「ご新郎様をお連れ致しました」
ご新郎と言われてやけに納得してしまった自分がいる。
それは、おそらく白のタキシードを来ていた理由が分かったからだろう。
中から「どうぞ」という声が聞こえてくる。
声だけでそれが誰のものか分かった。
それを確認したいが、案内をしてくれた女性が扉を開けているのに僕の体はうつむいたままだ。
そして、前回の時同様に体は自由に動かない。
まるで決まった線路の上しか走れないようなそんな感覚だ。
早く動け、早く動けと念じている内にアラームにより現実に引き戻されたのだった。