最強の言い訳 3
「私としてはそれで悲しいと思ってもらわないと話が進まないんだけどなぁ」
何故かと聞きたいところだが、これまでの傾向から何となく話が予測できた。
おそらく、今の僕が聞いたら少なくとも平然とはしていられない爆弾発言が来るのだろう。
今までは、凛花とりんちゃんが別人だと思っていたため大抵の事は流していられたが、そうでないと分かった以上、爆弾発言の範囲が広くなっていた。
簡単に言えば、急所が広がった。
それは、自分自身で自覚している。
時々、以上に反応してしまうのは謎のままだが、今までよりも心を動かされることが多くなっていた。
「今までそれで生きてきたんだから、悲しいわけないでしょ」
その来るであろう爆弾発言を回避するため、悲しくないと押し通す事にした。
それだけでは物足りなくなっているかもしれないと思ったが、少しでも隙を見せたら爆弾が投げ込まれてくるだろう。
「悲しいならもう少し居候の期間を延ばしてほしいってお願いしようかと思ったんだけど」
防ぐことは出来なかったが、思ったよりは小さい爆弾だった。
そういえば、凛花は夏休みの間には引っ越しが完了するという話だった。
夏休みももう半分以上はとうに過ぎている。
もうそろそろ居候は終わるのだろう。
「お母さんとお父さんは喜ぶだろうけど、さすがに新しい家にいた方が良いと思う」
「またまた~、僚太も喜ぶでしょ?」
明言を避けたが、凛花はそれが分かってか、分からずか図星をついてくる。
「そうかもね」
こういうことはあやふやにしておけばなんとかなる。
「甘やかしてくれるんじゃなかったの?」
「すっごくうれしいです」
忘れていた。
僕には今、最強の言い訳があるのだった。
大富豪のジョーカーのように何とでも組み合わせることが出来る。
爆弾発言に気を取られて忘れていた。
「何か言わせたみたいだよ?」
凛花は不満そうに言う。
普段であれば、実際に言わせたんだろ、と言い返すのだが、甘やかさないといけない。
「ウレシイ・・・・・・ヨ」
普段通りに言おうとして失敗した。
「もっと言わせたみたいになった」
凛花はそう言って面白そうに笑ってくれたので結果オーライだ。