過保護
こうして、ホテルの部屋に帰ってきた。
凛花は僕が部屋に入ってくる音で起きたらしい。
起きたのは良いのだが、
「急に過保護だね」
ヒヤッとすることを言ってきた。
僕が凛花=りんちゃんであると気づいていないことにしている。
そのため普段通りを心がけていた。
しかし、言われてみると心配でつい買ってしまったのかもしれないと思ってしまった。
これまでの僕の行動を考えるに、必要最低限なものだけを買ってくるだろう。
そう考えると何故そんなふるまいをしていた僕に未だに好意があるのか疑問が残る所である。
疑問と同時に後悔も生まれるが、今はそれに構う時間はない。
「相手が病人なら話は別だろ?」
「そっか・・・・・・」
凛花は寂しそうにそう言う。
とても罪悪感が湧いたが、僕が気づいてしまったことは隠しておいた方が良い。
一緒に旅行に来るということは少なくともそれだけ心を許している。
少なくとも好意に近い感情を抱いているということになる。
そう考えると、僕がりょうちゃんであるということに気づいている可能性は高いだろう。
でないと、好きになる要素がない。
自分で言うのもなんだが、学級委員で表で話す仕事は全て凛花に押し付けていたし、話したこともほとんどなかった。
学級委員の仕事については最後は自分で引き受けると言ったため、表で話すことのない仕事は率先してやっていたが、学級委員という役職上表で話す仕事の方が割合が多かった。
顔については貴史公認の普通評価である。
そして、クラス公認の陰キャであり、どこを好きになるんだといった感じである。
その点、彼女の中でまだりょうちゃんのイメージが強いのなら、好意があるのも分かる。
あの頃は陽キャコースを辿りそうな少年だったし、あの夢を見るとき、どこか第三者の視点で見るためか、よくそんな行動が出来たなと自分で思ってしまう。
つまり、今の好きになる要素がない自分が出来ないことをしているりょうちゃんには好きになる要素があるのではないか。
何故、それを凛花が言わないのかが不思議ではあるが、それを隠しているということは何か事情があるのだろう。
だから、バレないようにしなくてはいけない。
そう考えながら部屋にあるポットに水を入れセッティングするのだった。