閑話 ゴールデンウィーク 2
沙羅は、今回のゴールデンウィークは諦めていた。
諦めたのは言うまでもなく貴史に会うことである。
理由は色々ある。
例えば、総合体育大会、中学生最後になる可能性のある大会が来月に迫ってきている点。
そして、3年生であるため受験勉強にも手を出し始めないといけない。
更に、志望校も確定させなければいけない。
何より、ゴールデンウィークとはいえ部活があるため都合が合うかすら怪しかった。
おそらく、どの学校も日曜日は通常部活も休みになるはずだが、練習試合が入っていた。
練習試合は親の送迎の都合で日曜日になることが多いためそれはどうしようもない。
日曜日が部活の代わりに月曜日は休みなのだが、貴史もその日が休みとは限らない。
そんなことは考えつつも数分に1度コネイトの貴史とのトークを開いてはホーム画面に戻ってをしていた。
「はぁー」
深いため息を吐きながらスマホを机に置き、冷蔵庫に入っている麦茶を取りだしコップに注ぐ。
その麦茶をちょうど注ぎ始めたタイミングでコネイトの通知音がなった。
もしかしたら貴史かもしれないという淡い期待があるため、麦茶がコップいっぱいになるまですらもどかしく感じていた。
「え?」
思わず声が出た。
貴史からゴールデンウィークで空いている日を聞かれたのだ。
期待はしていたが、それは淡い期待。
1%あるいはもっと低い確率だと考えていたのだ。
月曜日は完全に空いてます。日曜日以外は昼からは空いてます。
そう返信した。
初めは、ありがとうございます。から始めていたのだが、冷静に考えて空いている日を聞かれただけなのにありがとうございますはおかしいと冷静になって気がついたのだ。
◆
その沙羅の様子を沙羅の両親は隠れる必要もないのに隠れて様子を見ていた。
「うーん、複雑だなー」
「何言ってるのよ、めでたいことじゃない」
どうやら沙羅が恋をしていることを確信しているようだ。
父親が複雑そうにしているのを、母親がなだめている。
「悪い人じゃないなら、許せる・・・・・・と思う」
「私の娘がそんな悪い人を好きになるはずないでしょ」
不安げな父親に母親は謎の自信をみせる。
裏を返せば、母親が結婚をした父親は悪い人ではない。
つまり、良い人だという意味にも捉えられるのだが、父親は娘のことで頭がいっぱいだった。