非日常は続く 2
食べ終わるタイミングは同じだった。
以前相手に合わせるようにと言われたが僕は特段気にせずに食べていた。
「別に僕のペースに合わせなくても」
「私のこと置いていかない?」
以前同じようなことを言われたことがある。
そのため柄にもないことを言ってしまった。
「少なくともデートしてるやつを置いていったりはしないよ」
「ヒューヒュー、かっこいいね」
その声で正気に戻った。
何故か凛花といると昔のことを思いだし調子が狂う。
まさか・・・・・・
いや、そんなことはないはずだ。
「で、次はどこに行くんだ?」
話を変えありえないことを考え始めた自分の思考も切り替える。
「実は次が最後なんだ」
まだ昼食を食べ終えたばかりのため時間には余裕があるはずだが次が最後らしい。
またしてもどこへ行くのかも言わずに進み出した。
その道中、
「あれ?僚太じゃん。って、彼女出来たの?」
この状況で一番出会いたくない人物に出会ってしまった。
僕のことを気安く呼び捨てで呼んだのは安藤鈴香。
「彼女じゃないよ」
凛花から抗議の視線が来るが気にしないことにする。
「なんかすごい視線でうったえかけられてるけど?」
鈴香が少し近づき小声で話しかけてきた。
「あの力が使えるようになってから新しい友達が出来てないのは知ってるだろ?」
鈴香にならい小声で返す。
「そうだね。まあ、元々人見知りだったっていうのもあると思うけどね」
「うるせえ」
「でも、にしては距離が近くない?」
「多分、あいつが変なだけだ」
「仲が良いんですね」
後ろから今までに聞いたことがない位怒りが籠っている静かな声が聞こえた。
「誤解しないでくださいよ、彼女さん。馴れ初めを聞いてただけですから。お邪魔そうだからまた」
後の事を全部こちらに任せて逃げやがった。
鈴香は昔からこうやってやばくなると火種を残して逃げるので会いたくなかったのだ。
今回は僕も元の火種を作った張本人であるため文句は言えないが。
どちらかというと燃え盛っていた火を火種まで鎮火させてくれたためお礼を言わなければならないかもしれない。
「私のこと彼女と認めてくれたんですか?」
前言撤回。ただ単に火を別のところに移しただけでした。
お礼はやっぱり言わない方針で。
「違うよ、たださっきのやつは思い込みが激しいタイプのやつなんだ」
ちなみに嘘である。今後会うことはないだろうから良いように性格を変えさせて貰った。
「な~んだ」
どうやら鎮火に成功したようだが元気の方までなくなってしまった。
このままでは僕の方まで後味が悪くなってしまいそうなためフォローをいれることにした。
「まあでも、今日一日は彼女なんじゃない?デートしてるわけだし」
言っててすごく恥ずかしかったが帰るまでずっとあのままだと罪悪感に押し潰されそうだったため我慢した。
「下げてから上げるなんてやるね、僚太くん」
若干先程よりも元気が戻ってきている気がする。
「こうやって女の子をおとしてきたのかな?」
これは完全に元気が戻ってるな。
「そんなことしてない」
「本当かな~?」
なんなら元気が増している気がする。
あのまま放置してても良かったかもしれない。
◆
着いたのは映画館だった。
ここもショッピングモールの中にある。言い替えるとショッピングモールの敷地内にある。
「何見るの?」
「『夕暮れの告白』だよ」
マジか。シチュエーションが似すぎていて途中で読むのを辞めたやつの映画だ。
そういえば映画になるって広告で見たことあったかも。本を買った後に気づいたはずだけど。
「なんでそれにしたんだ?」
「僚太くんの部屋にあったから」
確かにあるけども。いつ見たんだよ?
いや、絶対昨日の夜だな。
僕の許可無しで部屋に入っていたときに見つけていたのだろう。
◆
席を取るため機械の前にいる。
「あ、ここの席良くない?」
そう言って指が指されたのは一番前の席。
これは・・・・・・
「もしかして映画館来たことない?」
「なんでわかったの?」
「一番前の席は見上げないといけないから首が痛くなる。だからこの辺りが特等席だな」
そう言って僕が指したのは真ん中辺りの席。
「へぇ~、そうなんだ。あ、ここ空いてるよ」
僕の指した辺りにたまたま空いている席があったようだ。
そこの席をタップしお金を払うとチケットが出てきた。
「じゃあ、ジュースとポップコーン買いに行こ」
「まだ食べんの?」
「映画といえポップコーンでしょ?」
「まあ、そうだけど強制じゃないぞ?」
「え?そうなんだ。てっきりポップコーン持ってないと入れないのかと思ってた」
どういう勘違いしてるんだよ。
『1時からの「夕暮れの告白」の入場を開始します』
「ジュースだけ買ってさっさと席に着こうぜ。入場できるみたいだし」
「うん」