計画0から始まる旅行
「楽しみだね。どこに行く?」
凛花は弁当の蓋を開けながら聞く。
今回の旅行は行き帰りの道筋と泊まる場所は指定されているものの、他は自由である。
逆に言うと突然来たものだから計画がない。
「姫路城とか?」
兵庫県と言われるとそれくらいしか思い付かなかった。
そんなことを言うと怒られるかもしれないが、旅行とかにあまり興味がなかったものだから他県のことはほとんど知らないに等しかった。
姫路城を知っていたのも学校の授業で出てきたからである。
と言っても、地理とかで出てくる特産品なんかは全く覚えてない。
姫路城を覚えていたのは先生が「愛媛路地」で覚えろと言っていたためである。
今思うと、一番初めに余計な字が付いているし、片方は同じ読み、片方は同じ漢字、最後はちょっと足りないという感じで逆に覚えにくそうである。
いや、覚えにくいからこそ印象に残って逆に覚えているのかもしれない。
・・・・・・だとすると、先生が策士だったということになるが、本当にそんな意図があったのか今になっては分からない。
「なんか、社会科見学か遠足みたいだね」
凛花のこの感想は姫路城という行き先に対してだろう。
確かに、姫路城は社会の内容だし、遠足で城に行くということもあった。
「じゃあ他に何かある?」
やっぱりこれ以外には思いつかないため聞いてみる。
「神戸?」
まさかの市の名前を出してきた。
確かに県庁所在地だし、神戸で降りるため行こうとしなくても立ち寄る場所だ。
後、今日泊まる宿の住所も神戸市だったはずだ。
「神戸のどこ?」
もしかすると何か行きたい場所があるのかもしれないと思い聞いてみる。
すると、凛花は困ったような笑顔を浮かべ首を傾げる。
これはおそらく知っていた地名を適当に出しただけだ。
これなら、せめて半分くらいは計画を立てていて欲しかった。
二人とも詳しくないのではどこに行って良いのか分からない。
そのため、決まったことは今日は宿に直行してそこで計画を立てようというもの。
0の状態から4泊5日のスケジュールが埋まるはずもないためそれくらい時間を無駄にしても大丈夫だろうという判断だ。
逆に言うと、適当に動いているよりも早めに宿に行ってそこで効率的な計画を立てた方が無駄にならない可能性が高かった。
◆
新幹線の中では食事を終えた後、地図で駅から泊まる予定の宿への道のりを確認した。
そして、ついに兵庫県に着いた。
体調は長時間の移動により少しだるさを感じるが良好、天気も快晴。
こうして4泊5日の旅行が始まったのだった。