ご褒美
翌朝、目を覚まし朝食を食べるためにテーブルに行くと前日までなかった封筒が置いてあった。
それは一度開けた形跡があり、封筒には「凛花ちゃんと僚太へ」と書かれてある。
開けた形跡があるのはおそらく僕の前に凛花が中身を見たのだろう。
その中には一枚の手紙が入っていた。
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大事なところだけあげるとすると、
夏休みの課題から、免許取得までお疲れさま。
そのご褒美に旅行をプレゼントします。
前、宿に泊まったときのことを聞く限り大丈夫だと思うけど、心配なら大人っぽくしていくこと。
出発は今日の10時。
4泊5日で楽しんでこい。
こんなところだろうか。
旅行先は兵庫県。
なぜ兵庫県を選んだのかは不明だが、4泊5日と書かれているのにその間の日程は全く書いていない。
それどころか出発が今日の10時とは急すぎる。
間に合わないことはないが、忘れ物がないか確認する時間があまりとれないだろう。
最悪の場合現地調達という手があるため財布だけは忘れないようにしよう。
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美奈子は今、仕事をしながら少し不安を覚えていた。
以前までの僚太ならばおそらく、いや、確実に旅行には行かなかった。
凛花ちゃんが来てから外出が増えたため、宿の予約をするとき等は不安などなかったのだが、今になってその不安が押し寄せていた。
美奈子の中で凛花ちゃんが僚太よりも先に起き準備するのは確定事項であり、もしこれで僚太が行かないとなると凛花ちゃんに悲しい思いをさせてしまう。
それを考えると、旅行は案としては一番初めに消すべきものであった。
しかし、美奈子には経験があったのだ。
今後の人生を変えるようなそんな経験が。
だからこそ二人の関係が近づくように旅行という案が外せなかった。
◆
そんな美奈子の不安を知るよしもなく僚太は旅行に行くかどうか迷いもせず準備を始めていた。
中学生の時の修学旅行の時に買ってもらったスーツケースに着替えなどを詰め込んでいく。
スーツケースをプライベートで使うことはないだろうと考えていたが、その出番が今日来たようだ。
そんなことを考えつつ旅行に思いを馳せていた。