お祝いへ
昼食の後に免許センター内で初めて原付に乗り、しばらく運転し何事もなく終える事が出来た。
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こうして4人で迎えのいる駐車場に向かうと僕の親も沙羅さんの親も車から降り、二人で話していた。
知り合いだと聞いたことはないため恐らく父親という共通点から話があったのだろうと思われた。
「お、お帰り」
「お帰りなさい」
沙羅さんの父親は物腰丁寧な印象で背筋かピンと伸びている。
「二人で話されてたんですね」
凛花は恐らく沙羅さんの父親とも面識があったのだろう。
「朝、お互いの顔と車のナンバーを覚えてましたからね」
沙羅さんの父親がそう答えるが、お父さんがそこまで気がまわっているのが驚きだった。
でも、何となく声をかけられて話を合わせたという様子が頭の中に浮かんできた。
多分それが現実だろう。
「これから皆でどこかにお祝いに行っても良いなって話をしてたんだけど、どうする?」
僕たち4人は顔を見合わせる。
僕としては正直このまま家に帰るのでも良かったのだが、他の皆が行きたいのなら合わせた方が良いと考えた。
◆
結局行くことになった。
「行きと同じだと沙羅さんがかわいそうだから誰か一緒に乗ってあげて」
お父さんがそう言うのは2台の車で向かうためである。
行きはこちらの車に3人、沙羅さんが1人だったが、行き先が同じなら誰か1人もう1台の車に移ると2人づつにした方が良いと考えたのだろう。
その言葉に僕と凛花の視線は貴史へと向く。
「・・・・・・えっと、僕が移ります」
貴史は僕たちの視線に気づき、沙羅さんの様子を確認しながらそう告げた。
是非とも貴史には頑張ってもらいたい。
相手の親がいたら気まずいかもしれないけど。
◆
「シートベルトをしましたか?それじゃあ出発しますね」
沙羅の父親が丁寧に聞きながら車を発進させる。
「今日はありがとうございました。1人だと心細かったと思います」
「沙羅さんを読んだのは僕ではありませんから、お礼ならあの2人に」
貴史の言った通り、元々は僚太と2人で行く予定だったのだ。
それに凛花が加わり、沙羅が加わったという感じになる。
なんなら貴史は沙羅が原付の免許を取ることを勉強会で初めて知ったのだ。
それでも、一緒に試験を受け待ち時間を共に過ごしたことには変わりないのだが、貴史の謙虚さがそれでお礼されるほどではないと結論付けさせていた。
「それでも貴史さんがいて心強かったのは確かです。ありがとうございました」
「・・・・・・どういたしまして」