試験
明日6時にはこの作品の代わりに「ルシフェル」という作品の2話目を投稿します。
恋愛小説ではないですが、一度読んでみていただけると嬉しいです。
その日の夕方に加奈姉は叔母さんと共に帰っていった。
帰る際に凛花に何か耳打ちしていたが、当然僕には聞こえなかった。
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こうしてようやく日常に戻ると思っていたが、
「僚太、勉強しないと」
加奈姉が帰ってきていた間おろそかになっていた原付の免許を取得するための勉強をしなければならなかった。
そのまま寝ようとしていた時に凛花に言われたためやる気は0に限りなく近かったのだが、凛花のやる雰囲気に押し負けた。
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こうして時は過ぎていき、試験の日となった。
免許センターまでは僚太、凛花、貴史は僚太の家の車で、沙羅も親の車で来ている。
4人で受けに行くため馴れない場所への不安はない。
あるとすれば、一人だけ落ちるという結果にならないかという不安だけだ。
今日の日程はこうだ。
まず、試験を行い合否を発表する。
その合否に関わらず説明会のようなものを受ける。
合格した場合は免許証を作成。
その後、こちらも合否に関わらず原付の乗り方を教えてもらう。
といった感じだ。
午後まであるため長いのだが、もし今回落ちたとしても次に試験に来たときは試験と免許証作成で終わるらしい。
これらは僚太が昨日調べたことだ。
落ちた場合もしっかり確認しているというのは良いことでもあるが、悪く言えばマイナス思考であるとも言える。
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それぞれ受付で必要な書類を確認してもらった後、ちょっとした検査を受け、試験を受ける部屋に入った。
感覚としては学校の教室より一回り大きい程度だろうか。
そこには試験監督と思われる一人の老人が前に座っており、同じ試験を受けるであろう人も少し座っていた。
僕たちも早めに来ていたため恐らくこれから増えるだろう。
試験監督に受付で渡された紙を渡すと4人で縦一列に座るように言われた。
もしかすると4人で一緒に来たことで友達だと考え近くの席になるように配慮してもらったのかもしれない。
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改めてになるが、試験はまるばつ問題である。
だからこそヒッカケ問題があったりする。
そんな中で50点中45点以上とらないといけないため合格率も低いと聞く。
合格率は約50%だと調べたら出てきた。
つまり2人に1人落ちているのである。
2分の1の確率なんてよく当たる。
僚太はここでもマイナス思考を発揮し、2分の1で落ちると考えている。
だからこそ不安になっているのだ。
◆
試験の開始まではまだ時間があった。
今さらだが、席は前から凛花、僕、貴史、沙羅さんの順である。
僕の不安を知ってか知らずか凛花はこちらを向き一緒に復習しようと言ってくる。
そこから試験監督の「スマホの電源は切っておくように」という呼び掛けまで復習をしていた。
最後に笑顔で「僚太なら大丈夫だよ」と言いながら前を向きそれ以降こちらに振り向くことはなかった。
僕の不安はお見通しであったらしい。
ただ、何故かその大丈夫という言葉にすごく安心したのだった。
◆
試験が終わり、荷物を持って部屋から退出するように言われた。
試験の合否は受付上の電光掲示板に合格者の受験番号をうつす方式で行うそうだ。
それまで少し時間があるためロビーに設置してある椅子に座り待つことにした。
さすがに4席並んで空いてはなかったが、2席並んで空いている席が何ヵ所かあったため2人づつで分かれて座ることにして、僕の隣は・・・・・・
「やっぱり縦よりも横で隣の方が良いよね」
凛花である。
まあ、僕としても貴史と沙羅さんは応援しているのでそんな2人の邪魔は出来ない。
「そんなに変わらないでしょ」
確かに学校では縦の隣より横の隣の方が何かと関わることが多いが、凛花のように前の人が後ろを振り返って話しかけてくるのであればほとんど変わらない。
「変わるよ、試験中に横顔見れないし」
「それ、カンニングになるから」
「僚太の顔には答えが書いてあるの?」
「何でそうなるんだよ」
僕が言いたかったのは横を見ているとカンニングを疑われるということだ。
その事を伝えると、
「単元テストの時何も言われなかったよ?」
実際にやっていたようだ。
確かに、期末テスト等とは違って単元テストは席をわざわざ出席順にはしないため席は隣である。
何を言っても無駄な気がしてこれ以上は何も言わなかった。
◆
「試験どうでした?」
「自信がある、と言えば嘘になりますね」
沙羅の質問に貴史が答える。
「私も自信があるとは言えないですね」
2人とも不安が若干見えているが、僚太のようなマイナス思考までは至っていないようだ。
その証拠に2人とも笑顔を見せている。
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こうして各々待っていると合格発表が行われるというアナウンスが流れたのだった。