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銭湯 5

「それは・・・・・・」

凛花はその時の記憶を思い出すようにして語り始める。


「私には双子の妹がいたんです。

その妹が余命宣告をされるほどの病気になってしまって、明らかに生きる気力を失っていっていたんです。

その時に思ったんです。あの時、私に生きる希望を見せてくれたりょうちゃんなら妹にも生きる気力を取り戻してもらえるんじゃないかって。それで、お父さんが連絡先を知っていたので呼んでもらったんです。

その時に来てくれなかったのでそれで・・・・・・」

「嫌われたと思ったんだ」

凛花の続きを推測し加奈が言う。

それに頷き凛花は話を進める。

「でも、それがしょうがなかった事を美奈子さんから聞いたんです。

本当は来てくれなかったではなくて来れなかった事を。

その時丁度、精神科に行き始めた頃で新しく人に会うのは避けた方が良いと精神科の先生に言われていたそうなんです」

「でも、何でその時に教えてくれなかったんだろうね?」

加奈は凛花の事を妹のように思っている節があるため視線が凛花目線になっていた。

「妹の心配をしないといけない時に他の人の心配をさせる訳にはいかないと思ったそうです」

その答えに凛花も美奈子さんに同じような質問をしたのであろう事が推察できた。

「納得はしてないっぽいね?」

言い方や表情からその事は明白だった。

「もし、その事を早く知っていればもっと早く会いに来てたのに。そうしたら・・・・・・」

加奈は何となく凛花が言いたいことが分かった。


凛花は僚太が苦しかった時に何も出来なかった事が自分で許せないのである。

だからこそ先程納得のいかない表情をしていたのだ。

そして、その時に会っていれば自分が昔会ったことがあることも、そこで約束を交わした事も言えたのではないかと考えている訳だ。


加奈は両手を広げながら凛花に近づき、ギュッと抱きしめる。

「ほら、私には良いから日頃の嫌な事とか全部言ってみな」

加奈がそう言ったのは先程までのやり取りで凛花が溜め込みがちな性格であることを理解したためだ。

その後、凛花は加奈に言われたとおり全てを吐き出した。

しかし、そのせいでのぼせてしまったことは言うまでもない。



凛花達が銭湯に行って大分経ったが中々帰ってこない。

そう思いながら僚太は自分のベッドに寝転がっていた。


そうして、珍しく起きたまま昔の事を思い出す。



「もうひとつやくそくしよう」

りんちゃんからの言葉に約束が含まれていためか、少し顔を引き締める僚太。

「いやなことがあったらこんどはわたしがたすけるね」

それが約束の定義に当てはまるのかはどうでも良く、その時の僚太はそれを約束と認識した。

「うん、ぼくもたすける」

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