呼び捨て 2
結局その後、勝った人が負けた人に何か命令するということはなくなり普通にトランプを楽しんだ。
そして、夕食の時間となる。
さすがに6人全員で食べられるほどテーブルが大きくないので、寿司屋の時の組み合わせで時間を分けて食べることにした。
「でねでね、僚太はその後・・・・・・」
食事の場では加奈姉による僕の昔の頃の話で加奈姉と凛花が盛り上がっていた。
「それ、本人の前で話すことではないよ?」
「なになに?恥ずかしくなっちゃった?」
僕の言葉に加奈姉は楽しそうにそう言ってくる。
「別にそんなんじゃないけど・・・・・・」
「じゃあ、別に良いよね。それで、さっきの続きだけど・・・・・・」
結局食べ終わるまで僕の昔話をして二人で盛り上がっていた。
◆
夕食の後、加奈姉と叔母さんは近くの宿に泊まるため、家の中は普段通りとなった。
寝る準備を整え自分の部屋に入ったが、凛花も一緒に入ってきた。
「加奈さんいい人で良かったぁ」
「すごい仲良くなってたね」
これは本心である。
同族嫌悪的な感じになるという悪い方の想像通りにならなくて良かった。
しかし、仲良くなりすぎて僕のことをベラベラ話す加奈姉には少しヒヤヒヤしたものだ。
いつ、僕が声で相手の感情が分かることをばらされるか分かったものではない。
まあ、加奈姉も秘密は守るだろうから話の方向性を変えたり等はしなかったが。
「僚太も加奈さんと仲良かったよね」
「そりゃあ、いとこだし」
「僚太はいとこでも距離を置いてるのかと思ってた」
「そのイメージがあるのは認めるよ」
「あ、そうそう。僚太も私のこと呼び捨てで呼んでも良いんだよ?」
「遠慮しとくよ」
凛花が明らかにムスッとする。
「ケチだね」
凛花がこの家に住みだしてから明らかに財布の中身の減りが早くなったため、それでケチと言われるのは違う気がした。
そう言ってみると、
「呼び捨てで呼ぶのにお金は要らないでしょ?それを渋るからケチなんだよ?」
何か、いつもの凛花と違うな・・・・・・これは、まさか。
「もしかして、加奈姉に何か言われた?」
「あ、バレた?でも、加奈さんすごいね。ここまでの流れをほとんど予測してたよ」
加奈姉が僕のことを何処まで理解しているのか気になってきた。
「はぁー、凛花も早く部屋で寝たら?」
一瞬驚いた顔をする凛花。
「・・・・・・ありがとう、おやすみ」
ものすごい嬉しさが伝わってきたその声と共に凛花は部屋から出ていった。