呼び捨て
今日は火曜日であるがお店はお昼までにして、お父さんも共に昼食に来ていた。
お店は明日は営業し明後日は通常通り休む予定のようである。
加奈姉と叔母さんは明後日の夕方までこちらにいるらしい。
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こうして車に乗り込んだわけだが、今日は僕が助手席に追いやられる形で座ることになった。
いつの間にかと言ってもさっきの間しかないのだが加奈姉と凛花が仲良くなっており僕が普段座る席に加奈姉が座っている。
更にその後ろの席に叔母さんとお母さんが座っており、運転はお父さんだ。
何故か加奈姉と凛花は声を伏せて話していたが、仲が良いのは伝わってきた。
そして、その後ろからは世間話をしているお母さんと叔母さんの声が聞こえてくる。
内容は様々であったが政治への愚痴、お隣さんの話等、それこそお隣さんと道端で会ったときに話すような内容だったと思う。
というのも本を読みながら耳に入ってきた程度だったからだ。
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やって来たのは回転寿司。
全員で6人のため一つのテーブル席では入らなかったため三人、三人で別れて座ることになった。
僕と同じテーブルなのは凛花と加奈姉。
レーン側に凛花が座りその隣が僕、その対面に加奈姉が座っている。
何故かわからないが席取り合戦のようなものが始まり、二人が先にレーン側に座っていたのだ。
その時点ではまだ僕の座る場所には加奈姉の隣という選択肢もあるように見えるが、加奈姉はすぐに荷物を隣に置いたため必然的に座る場所が凛花の隣となった。
加奈姉がテーブルに据え置きされている端末を触りながら注文をしている。
「僚太はポテトとメロンソーダで良いよね?」
これは普段僕が確定で頼むメニューだ。
「うん」
今日もそのメニューは頼む予定だったためそう答えるが、
「良くないって言っても、もう注文しちゃってるけどね」
そう笑いながら言われた。
ここまで確信して頼んでいるのは加奈姉達が帰って来る度に寿司屋に来ておりその時に覚えたのだろう。
「凛花ちゃんはどうする?」
「僚太と同じので」
「うんうん、了解」
うん?聞き間違いか?
今凛花に呼び捨てで呼ばれた気が・・・・・・・・・
「僚太どうしたの?」
聞き間違いじゃなかった。
「え?あ、いや・・・・・・そ、その、よ、呼び方」
何でこんな歯切れ悪くてカミカミになってるんだ?
「え?加奈さんが羨ましかったから。ダメだった?」
凛花はそう言いながら僕の顔を覗き込んでくる。
「いや、そんなわけじゃ・・・・・・」
「それじゃあ、注文もしてみる?」
どういう流れか加奈姉は操作していた端末を凛花に譲る。
「はい、とりあえず僚太のポテトとメロンソーダを一つずつ追加で良い?」
「良くないわ!」