解散
食べ終わって少し雑談した後、勉強を再開した。
そして、電車の都合もあるため16時で解散することになった。
「僕は用事あるからこれで」
「私も」
僚太と凛花は終わるとすぐにそそくさと貴史の家から出て帰っていった。
「私も電車があるので・・・・・・今日はありがとうございました」
「良ければ送っていきますよ」
「いえ、大丈夫ですよ」
「じゃあ、送らせてください」
その流れを一通りして二人で笑いあう。
あるときから彼らの帰り際の会話はこの形に固定されていた。
きっかけは些細な事であったが、それが続いて今に至る。
◆
駅までの道のりを二人で歩いていた。
「家の中すごく綺麗でしたね」
「そういえば、家に来るのは初めてでしたね。綺麗なのは友達が来るのがわかってたからですよ」
友達という言葉に嬉しさと悲しさを感じる沙羅。
友達という関係が築けているのは良いことだ。
しかし、その関係は自分が求めている関係ではない。
かといって、今の関係が変化するのも嫌だと感じてしまっている。
「私が行くときは気にしなくて良いですからね」
また、行きたいという願いを込めて言ったその言葉は電車の音によって遮られる。
「何か言いました?」
「いえ、あの電車に乗らないといけないのでこれで」
「・・・・・・」
貴史は無言で手をふりかえした。
沙羅が見えなくなったところでそっとふっていた手を下ろし困ったように頭をかく。
「意味を聞くべきだったかな・・・・・・」
もう、駅には用事がないはずなのに電車が出発するまでその場で立っていた。
◆
「あの二人上手くやってるかな?」
「貴史は僕よりもコミュニケーション能力があるし大丈夫でしょ」
「沙羅は他人のには積極的なのに自分の事になると奥手だからなぁ」
凛花と僚太は何か用事があるわけではなく、ただあの二人を二人きりにしようと考えたためだった。
「自覚はしてるけど、少しは否定してくれないかな」
僚太が言うのはコミュニケーション能力に関する部分だ。
それをまるで正しいというようにスルーした凛花に少し落ち込んでいた。
「・・・・・・ごめん。否定は出来ない」
そこは、嘘でも否定してくれないと逆に傷つく。
まあ、声で嘘と分かってしまうのでどっちもどっちなのだが。
そんな会話をしながら家に帰ると、テレビ画面の前でお母さんが号泣していた。