契約書 2
「始まったね。夏休み」
終業式、三者面談が終わり家に帰ってきてすぐに凛花が明るい声でそう言った。
「土日明けたら補習が始まるけどね」
僚太の声が普段通りなのは彼の口から出た補習があるという事実のせいだろう。
「午前中で終わるんだから良いじゃん」
「逆に一日になって補習の期間が半分になる方が良いな」
「もしかして、私が作ったお弁当が食べたいのかな?」
「そんなんじゃないって」
確かに美味しいけど、それを理由に補習が一日になってほしいとは言わない。
僕が、そうなってほしいと思う理由にはやはり通学時間にある。
学校が近くであるなら行く回数が増えても通学時間はそこまで変わらない。
ただし、遠くなればなるほど通学時間が増える。
さらには、朝早く起きなければいけなくなる。
休みの日もそれほど変わらない時間に起きてはいるが、起きなければならないと起きなくても良いが起きるとでは全然違う。
もろもろの説明をすると凛花は納得したようだ。
「つまり、長い時間私の隣にいたいってことだね」
声から冗談であることはわかったが、どうしてそういうことを思い付けるのか謎である。
◆
その日の夕食。
「凛花ちゃん。次は・・・・・・・・・」
「はい、わかりました」
お母さんが凛花になにか話していた。
嫌な気配がするのは気のせいだと信じたい。
きっと、嫌な気配がするのはこの光景を見た後あの契約書によりテスト勉強をさせられたからだ。
・・・・・・やっぱり、これは何となくヤバイ気がする。
結局その日の夜は身構えていたが、凛花が部屋に来ることもなく寝たのだった。
◆
翌日、金曜日。
補習は来週の月曜日からのため部屋で読書やらパズレンやらをしようとしていたのだが、始める前に凛花が部屋を訪ねてきた。
片手にヒラヒラと紙を携えて。
・・・・・・本格的に嫌な予感が当たってそうな気がする。
「僚太くん、おはよう。これ読んで」
◆
契約書
これより夏休みの間、僚太の宿題を計画的に進めさせること。
早く終われば良いご褒美がある。
ただし、終わらなかった場合毎食一人、もしくは僚太を伴って作ること。
承諾
立花 凛花
見届け人
田中 美奈子
7月25日
◆
・・・・・・今回のは日付があるから有効なのか?
前回の仕掛けを知ったためまず気になった日付だがちゃんと書いてある。
後変わったところはご褒美があるところか。
「ご褒美って?」
「私も聞いてない」
上げて落とすという残酷な真似は流石にしないだろうし今回は本物の契約書と見た方が良いな。
罰は毎食作るか・・・・・・
しんどそうだけど現実味があるな。
それに今回もまた罰を受けるのは凛花なのか。
僕がこういうのに弱いことがわかりきってるな。