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最強


俺達はその日の朝、街を歩いていた。

どうやらこの世界には能力はないらしく、何で俺がこの世界に転生した理由も分かっていない。

前の世界ではその世界の中心、所謂主人公と言われる存在だった。

そんな俺がこの世界に生まれ落ちたのには何か繋がりがありそうだな。

そんなことを考えていたら、

「ねぇねぇ、そういえば貴方名前は何て言うの?」

「和人だ。」

そういえば名前を聞くだけ聞いて俺の方は教えてなかったな。

「ねぇ和人、噂で聞いたんだけど貴方は最初奴隷として決闘に出ていたのよね?」

「あぁそうだが、俺はどこにも行く当てがないから決闘に出れて逆に良かったのかもな。」

俺みたいな奴は決闘した方が性に合ってる。

決闘に勝つだけで色々なものがもらえるのならしない手はない。

そんな風に思考していたら、

「何考えてるの?お腹でも減った?」

「まぁ腹は減ったがこれからどうしようかと考えていたところだ。」

「じゃあ私と一緒にこの世界で一番を決めるトーナメントに出ない?そのトーナメントに勝ったら世界で一番偉くなれるんだよ?」

そんな大会があるのか、一番偉くなればこの世界の情報を誰よりも知ることが出来る。

じゃあ、やらない選択肢なんて存在しないんじゃないのか?

「いいぞ、その大会興味がある。」

「よしっ!じゃあ決まりだね!大会は一か月後。」

「分かった。それに向けていろいろ準備するか。」

「あ、そうそう。私、その大会で結果を残すために昨日決闘をしていたんだよね。この国では強い方だけど世界では通用するかわかんないからね。」

エリーは意識が高いらしい。

そして俺は気になったことを聞く。

「でも、俺達がマッチアップする可能性もあるんじゃないか?」

するとエリーは大きく胸を張って、

「大丈夫!その大会はチームの人数制限がないの!」

そうなのか、でも能力の無いこの世界でどんな強い奴が何人束になろうとも負ける道理はない。

だからこそ、

「じゃあ俺ら二人で出るか。」

そう言ったのだ。

「え!二人で出るの?これから人数を増やそうと思っていたのだけれど。まぁいっか、なんか和人だったら一人で勝ちそうな気がするし。」

相当信頼されてるらしい。

「まあそうゆう事だ。」

そんなことを話している内に、

「おっ、着いたんじゃないか?」

ここがこの世界の政府、がいる場所か。

そこはまるで塔のような大きさだった。

これだけでどれだけこの世界の政府が大きい存在か分かるな。

そうして俺達はその建物の中に入っていった。



「何の御用でしょうか?」

後ろからそう言われた。ぱっと振り向くとそこには執事のような恰好をした年配の男性がいた。

「決闘に勝ったからお金が欲しいんだが、」

「そうでしたか、上の方がいる部屋に案内します。」

「そうか、ありがとう」

そうしてその男の後ろを付いて行き、やがてその部屋の前まで着いた。

そして、

「私の役目はここまでです。どうぞごゆっくり。」

それだけ言ってその男は下がっていった。

「じゃあ入るか。」

そう言ってドアを開ける。



「何の用でしょうか。」

部屋に入った瞬間そう言われた。

「決闘に勝ったからちょいとお金を貰いたいんだが、」

俺はそう言った。

するとその数人いたお偉いさんの一人が、

「おい、そこのお前。お前については知っている。イカサマをして相手に降参させた、と言われている男だろう?」

「いや、イカサマなんてしてないんだが、」

そこまで言って俺の言葉を遮られた。

「じゃあこうしよう。我々が手配する戦士に勝てたらそこの女に勝つ以上の報酬を与えよう。」

「乗った。」

俺はノータイムでそう答える。

「そうか、じゃあ入って来い。」

その瞬間異質なオーラを放っている背は俺と同じくらいの男が入ってきた。

でも今までの奴らとは何かが違う。

「こいつの名はギルティー。我々の護衛兼、この国最高の戦士だ。」

「外にずっと変な気配がすると思っていたらこいつだったのか。まぁ、よろしくな。」

そう言ってギルティーと握手を交わす。



そうして数時間後、全ての準備が整い会場にまでやってきた。

客もたくさんいるようで、俺が出る前でも会場に静寂は訪れない。

それくらい壮絶な戦いが行われようとしているらしい。

そして時間になり、フィールドへと足を運ぶ。

賭けのようなものが行われており、何人がどっちに投票したかが分かる。

「ギルティーが約一万票で俺が、、、一票か。」

随分と舐められたものだ。

でもこの一票が誰かなんて容易に想像できる。

エリーのためにもこの戦い、負けられないな。

そうして俺は目の前のギルティーに向き直る。

こいつは相当強いんだろう。でも、この世界でだ。

能力が蔓延る世界で最強だった俺がこいつなんかに遅れは取らない。

だから、ここで一旦この国最強の座を奪っておくことにしよう。



始まった瞬間、そいつは動き出す。

でも、

「速い!?」

人間とは思えないくらいの速度でこちらに近づいてくる。

俺じゃなかったら分かんなかった。目で追えない奴がほとんどだろう。

俺はそいつの動きを止めようと能力を発動してそいつの手に手錠が掛かる。

でもそいつの力は尋常じゃなく、一瞬で破壊された。

それでも少しびっくりしたのか、

「今のは何だ?」

そう聞いてくる。

「別に?ただの手品だ。」

そうして攻防は再開する。

今度は俺から攻める。

手に短刀を作り出して、そいつに切りかかる。

そいつも手に持っていた剣で俺の攻撃を受け流す。

「素の力じゃ俺がギリ負けるって感じか。」

そう呟く。

だったらもう手段は絞られてきたんじゃないのか?

そんなことを考えていると目の前から攻撃が飛んでくる。

俺はギルティーが持っていた剣で胸を貫かれた。


俺は目の前にいるその男目掛けて剣を刺した。

殺したと思っていた。

上位の戦いになってくると手加減が難しくなるので殺しはありとなっているのだ。

だから殺す勢いで刺したし、殺したと思っていた。

観客も皆声を上げていた。歓声だ。

そして後にを振り向いてそのフィールドを去ろうとしたその時、

「おい、どこ行くんだ?逃げたいならさっさと言えよ、降参したいですってな。」

そう奇妙な笑みを浮かべながらそいつは言う。



危なかった、能力を発動するのが一歩遅れていたら命はなかったかもしれない。

「上等だ、俺も全力で行こう。」

そいつはそう言う。

俺も全力を出していたワケじゃない。この国での最強がどのくらいなのか調べようとしていただけだ。

大体わかった、能力はすごくいいもんだ。そう実感した。

能力が無かったら俺はこの国でも中の下くらいだっただろう。

でも能力がある。俺にはこいつらとは違うものを持っている。

だからその力を使って、この戦いを終わらせるとしよう。

そして俺は想像する。

「もしも俺がこいつの背後にいて、この手に持つ短刀で突き刺していたら。」

なんてな。

そしてその刹那、勝負は終わる。

最強は決まった。



そうしてその後この勝負は幕を閉じ、エリーと合流していた。

「あれは何なの?動いたのが見えなかったけど。」

「まあ見えないくらい速く動いたんだよ。」

俺は嘘をつく。

この世界であまり能力というものを晒さない方がいいと判断した。

「ほへー、すごいんだねー。」

そう驚きながら言うエリー。

そういえば腹が減ったんだった。。

「なぁエリー、どこかご飯を食べに行かないか?」

「え!?もちろん!いい店があるんだよね!!」

そう喜々としながら語り始め、その後俺たちはご飯を食べて解散をした。



報酬も貰えたし、宿はある。

まぁ、適当に夜を過ごすか。

そう考えていたその時、俺は思いついた。

「そういえば俺は主人公だっけか。じゃあこれを見てるお前ら、見とけよ。俺に悲劇が起こるその時をな。」

主人公というものは必ずしも悲劇が起こる。

だから俺も、いずれそうなるのかもしれない。

でも、今はそんなこと考えなくてもいいか。

そうして俺はその思考を振り払って、自分の宿に向かうのだった。


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