第五十四話「体育祭、魅せるはペア」
「――説明しよう!! 大玉トライアスロンとは――学校中に張り巡らされた特殊コースを通って大玉を運んでいく競技である!! 生徒会副会長の謎技術によって合法のドローンカメラが用意されているので実況や観戦はどんな場所でも問題なく行われるぞ!!」
「ようやく言えてよかったな」
というわけで、祐介の説明通り――大玉トライアスロンという競技は学校全体を使った大玉運びである。特殊ルールとしては各エリアに大玉を運ぶ方法が指定されていて、単に転がしていけばいいわけではないというものもある。
大玉トライアスロンはもともと企画されていなかったのだが、美緒が生徒会室で昼寝をしているときの寝言で構想が話され、それを里奈が聞き取って記録して競技に仕上げ、大輔が各方面に話を通してギリギリのスケジュールで競技を実行させ、仕事が増えた拓也が被害を被る、という形で奇跡的に実現していた。
『――次は大玉トライアスロンです。参加する生徒は準備をしてください。また、各エリアを担当する先生方は所定位置について待機をお願いします』
放送が聞こえてきて、参加する予定の健太と美穂が「んじゃ、頑張って来るわ」と場を離れていった。ほかにも、生徒会本部のテントからは里奈と拓也が離れていくのも見える。二人は別クラスで敵同士だからか、遠くから見ていても敵対している様子がよく分かった。厳密には里奈が一方的に喧嘩を吹っかけているようにも見えたが、祐介はそれを見なかったことにする。
大玉トライアスロンという競技は恐らく、多分、少なくとも祐介や大輔の知る限りでは、全国でも初で実施される競技だ。そういうこともあってか、生徒たちの盛り上がりもいい感じ。
「生徒会本部が忙しかったのは多分、この競技を実行させるためが半分くらいだっただろうし、盛り上がってるのはいいことだな」
「メガネ教授とかがあんなに死にそうになってたのって、この競技のためだったの?! こだわりが強そうな顔してるなぁとは思ってたけど、ここまでとは……」
「そのこだわりを貫き通して、しかもしっかり実現させてるあたりお兄さんもよくやるわ。まあ、俺もそのあたり嚙ませてもらいはしたんだけど」
「さっすが私のお兄ちゃん!! カッコいいー!!」
「お前のじゃないけどな」
あまり声高に叫ぶことはしないが、大玉トライアスロンの実現には祐介も一役買っている。もちろん、重要な仕事に関しては大輔や美緒が中心に行っており、そのあたりに祐介が絡むことは出来なかったわけなのだが――彼がやったのは主に書類の整理と職員室との橋渡しあたりだろうか。
そうして手伝った記憶もあって、祐介にとってもこの競技は思い入れが深いものがある。
『各組、選手の準備が出来たようです!! では、大玉トライアスロン――スタートです!!』
大輔の放送と重なって審判のホイッスルが甲高い音を響かせる。
まずは基本的な大玉転がしだ。基本的には二人一組となってグラウンドのトラックを半周する。単純だが、だからこそ少しの失敗が大差をつけることにもつながるのが恐ろしいところだ。
「シュガー君、そっち!!」
「おっけ、そっちも気を付けて」
チームメイト同士の相性が重要な第一ステージ。しかし、そういう点では健美ペアの右に出るチームがないのも頷けた。美穂が内周側から勢いをつけ、健太が外周側からカーブに合わせて軌道を修正する。常に言葉を交わしながら、二人で大玉をコースから外さないようにコントロールしていく。
本当にダントツな勢いで、第一エリアを突破した第一着は健美ペア。そのまま第二エリアも継続で進んでいく。
『選手たちが続々と第二エリアに進出していきます! 第二エリアは段ボールの障害物が存在する中庭――大玉を転がしているだけでは通ることは出来ません!!』
早速大玉転がしの常識を破壊しながら、美緒の解説がグラウンド中に響く。用意された段ボールの障害物というのは生徒側は簡単にまたいで通れる程度の高さだが、大玉を転がして通るには難しいように設定されている。そして、大玉で障害物を大きく動かしたり壊したりした場合は大幅な減点もあるのだ。
「どうする、シュガー君?」
「持ち上げるしかないんちゃうかな……!!」
「よっし、私が向こうで支えるし思いっきり投げて!!」
「このでかさの大玉を投げるのは無理よ?!!」
そうは言いつつも、美穂の前だ。健太もどうにかそれらしいことをしてやろうと力を込めて、思いっきりに大玉を跳ね飛ばした。大玉が障害物を優に超えてそのまま美穂の構えにフィット!!
そのまま段ボールの障害物一つ目を突破し、続く簡易な迷路のような配置の段ボールたちをどうにか回避しつつ、健美ペアは大玉を第三エリアの走者のもとへと運んで行った。
「里奈!! 次は頼んだ!!」
「任されたぁ!!」
第三エリアからは一つの大玉につき走者一人だ。バトンではなく大玉が次々と走者に託され、里奈はその先頭で猛然と次のエリアに向かって走っていった。




