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付き合っていないと言いつつイチャつくカップルが面白い  作者: masterpiece (村右衛門&モ虐)
<中学2年生--2学期>

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第五十三話「体育祭、魅せるは実況」


『――生徒会副会長!! 次期生徒会長と言われる生徒会副会長が走っています!! 皆さんご覧ください、左端の眼鏡をかけた生徒会副会長が走っています!!!』


 早速のところで実況の美緒が暴走して、大輔は本当に転びかけた。というか、何故か驚いた隣の走者が転んだので大輔はどうにか三人中三位という結果だけは回避できたという結果である。美緒の暴走実況のおかげで最下位は免れたという状況に、大輔としても納得は出来ないが。

 まあどうにか、転ぶことなく徒競走を終えた大輔はそのままの流れで実況席へと向かった。


「あれ、議長。石井さんはどこへ?」


「この書置き残して逃げていったけど。副会長が来たんやったら、私もそろそろ準備しよかな」


「あ、はい。お疲れ様です。徒競走頑張ってください。――えっと? 『高橋にやらされた、私は悪くない』……」


 里奈が去り際に示していった書置きを溜息交じりに読み上げ、大輔も実況席に座る。なるほど、一番やりそうな人間の名前が出ると信憑性が段違いだ。どのタイミングで言っていたのだろうか。祐介は早くから学校に来ていたらしいし、美緒に悪いことを吹き込むだけの時間は捻出できただろう。

 しかし、いつもは門番としての役割を果たすために犬猿の仲のような関係を続けている二人も、副会長という獲物を前にしたら団結するのか、という妙な感慨はある。


「二人が仲良くしてくれるのはいいことだけれどね」


 まあ、いいか――と気分を切り替えて、大輔は実況マイクのスイッチを上げる。


『次の徒競走に参加する二年生女子は準備を始めてください』


 実況、とはいってもこのご時世、生徒を特定して何かを話すことも簡単ではない。それがいじめの発端になったなどと後から言われようものなら、生徒会本部は先生から怒られるだけではなく世間からもよくない目を向けられるだろう。まあ、生徒会副会長のような人間は例外だったのだろうが。

 ということで、大輔は何を話したものかと困却しながら、ひとまずは『実況』を続けた。特別話せることは少ないが、その中でも差支えのなさそうなものを選んで口上に変え、舌の上で転がしていく。


『――第八走者、ただいまスタートしました! 四者四様で走りますが差は僅差です!! 白熱の接戦を続けたまま、一着、二着、三着、四着と連続でゴール!!』


 ちょうど、次の走者は誰かと視線を向けて、拓也がいた。

 美緒がしたような実況をしてやろうか、と思って少し悩む……が、やはりやめておいた。残念ながら、今の大輔には責任を押し付けられる誰かがいない。


「お待たせ。ここからは手伝うわ」


「お疲れ、いらっしゃい。頼むよ」


 走り終えたまま、クラス席には戻らず実況席まで走ってきた拓也と短い言葉をそれぞれ交わして、大輔は実況マイクの一つを拓也に譲る。実況が二人になれば出来ることは一段と増える。一人ではできなかったような鉄板ネタが、二人になればできる。


『――ではここで、解説の蒼井さんに徒競走の魅力について説明していただきましょう』


『ぇ、あ、はい! 徒競走はですね……?』


 やはり、この辺りは外せないネタだろうか。無茶ぶりをする以上、拓也が対応できなかった時には大輔が助け舟を出せるようにと準備はしていたが、そのあたりは流石水準の高い生徒会本部役員である。中途採用であるとはいえ、拓也も順応力が高い。

 それらしく徒競走を解説して話を締めくくる拓也に、大輔も「すごいなぁ」と他人事で思う。


「無茶ぶりの対応は二重丸、と――」


「びっくりしたわ、本当に……」


「出来ると信じていたよ。出来なかったらまあ、生徒会本部役員から追放やったかもしれんけど」


「結構重要な試練やった?!!」


「冗談やって、冗談冗談」


 そうは言いつつ、大輔の表情が真剣なまま変わらないので拓也としては戦々恐々である。まあ当然、大輔はそんな無茶ぶりをして生徒会本部役員に相応しいかというような試練を出したりはしないし、そもそも大輔にはそんな権限はないのだが。

 

 ――さて。そんな茶番をしている暇もないのである。

 実況マイクに改めて向き直り、大輔と拓也は実況の言葉をそれぞれ転がしだす。


  *


「――そろそろやで、シュガー君」


「あ、もう?」


 生徒会本部役員の一幕から移って、こちらは生徒席である。

 間もなく体育祭の中でも注目度の高い大玉転がしが始まるとのことで、すでに参加するメンバーの準備は始まっていた。そして、健太と美穂のペアも大玉転がし参加メンバーである。


「今回の大玉転がし、なんか変なんよなぁ……」


「大玉転がしっていうか、大玉トライアスロンなところあるんよね」


 競技の時間が迫る中、健美の二人が大玉転がしのルールを思い返す。実際、ルールとコースが発表されたときには多くの生徒から困惑の声が上がったものだ。それをどうにか抑えて説明しきり、実際にこうして実現までさせたあたり、生徒会本部役員の面々は奇才である。


「説明しよう!! 大玉トライアスロンとは――!!」


「うわぁ、出てきた」


「お兄ちゃんのことをお化けみたいに言わないでくださいよー、エイリアン先輩?」


「説明しよう!! 大玉トライアスロンとは――!!」


「ついに壊れちゃったんやな、祐介(美穂⇒祐介ってこの呼び方やっけ?)」


「NPCになっちゃってることについては否定できません」


「説明しよう!! 大玉トライアスロンとは――!!」


「はいはい、教えてくれていいよ」


「――解説はCMの後で!!」


 車いすに乗った祐介以外、全員ずっこけた。


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