表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

85/319

第85話 この子たちが異常ってことだね

「倒したわ」


 エスケイプリザードを討伐したアンジェが戻ってくる。

 魔物が泥塗れになっているのは仕方ないだろう。


「ん。お疲れ」

「ちっ、あんたに負けたか……」

「師匠はもっと早かった」

「何であんたまで参加してんのよ?」

「つい」


 ゲインは泥だらけのエスケイプリザードを確認して、


「……間違いないな。まさか、たったの十分で三人目もクリアしてしまうとは……いや、受験者としては二人か……」

「実は結構簡単だったりしないわよねー?」

「そ、そんなはずは……。事前に自分でもやってみたが、あらかじめ攻略法を考えてあってもニ十分はかかったのだぞ?」

「じゃー、この子たちが異常ってことだねー」


 エミリーのその言葉を証明するように、それからしばらく誰も戻ってこない時間帯が続いた。

 やがて三十分以上が経った頃だろうか。


 ようやく三人目がエスケイプリザードの死体と共に帰ってきた。


「あー、厄介な試験だったぜ……。って、俺より早い奴が二人もいたのか。ん? 何で死体が三体あるんだ?」


 そして四人目が戻ってきたのは、五十分が経とうかという頃。

 五人目と六人目はギリギリ滑り込む形で、制限時間内に間に合った。


「……時間だ。一次試験の合格者はここにいる六名だな」

「結局、九名が脱落しちゃったってわけかー。……普通に難しい試験だったわねぇ……」







 合格者六名は次の試験に挑むこととなった。

 さらに五階層ほど潜って、場所はニ十階層。


「あ、熱いわね……。いるだけで体力が奪われてしまうわ……」


 顔を顰めながら垂れてくる汗を拭うアンジェ。

 そこは洞窟内のあちこちに煮え滾る溶岩が流れている、灼熱地帯となっていた。


 他の受験者たちも汗が止まらない様子だ。

 そんな中、ファナだけが涼しげな顔をしていた。


「ちょっと、あんた、何で汗一つ掻いてないのよ?」

「師匠が涼しい」

「どういうことよ? って、冷たっ!?」


 訝しげにファナが抱えている俺に触れて、アンジェが声を上げる。


「魔法で身体を冷やしてるんだ」

「ん。ひんやりして、凄く気持ちいい」


 ぎゅっと俺を抱き締めてくるファナ。

 お陰で顔が胸に強く押し付けられた。


「ず、ズルじゃないのっ?」


 アンジェの抗議に、試験官が答えた。


「今は移動中だからな。それくらいなら構わないだろう」

「ていうか、そんな魔法まで使えるんだねー」


 そういう試験官たちもこの灼熱の中で平然としている。

 よく見ると二人の身体を薄い水の膜が覆っていて、それが熱さから彼らを護っているようだ。


 魔力から判断するに、エミリーの魔法だろう。


「だ、だったら、あたしにも寄越しなさいよ!」

「仕方ない」


 おおっ、アンジェが自分から俺を抱こうとしてきたぞ。


「ああ~、確かにこれは冷たくて気持ちいいわね~」


 俺を抱き締めて恍惚とした顔になるアンジェ。

 俺もアンジェの胸に挟まれて気持ちいいよ……ぐへへへ……。


 しかしかなり汗を掻いているようで、正直かなりびしょびしょだ。

 まぁそれが良いだけどな!


「……熱い」


 一方、今度はファナが熱そうにしている。


「ん。いいこと思いついた」


 そう言って、何を思ったか、アンジェの反対側から俺を抱き締めてきた。


「ちょっと、何してんのよ!?」

「共有。これでどちらも涼しくなれる」

「そうかもしれないけど、歩きにくいでしょうが!」

「心配ない。わたしが後ろ向きに進む」

「そ、そういう問題じゃ…………か、顔が近くて、恥ずかしいし……」

「? 何か言った?」

「ななな、何でもないわよ!」


 二人の言い合いが頭の上から降ってくる中、俺はというと、顔がアンジェの胸に、頭はファナの胸に包まれていた。

 ふふふ、なかなか素晴らしいサンドイッチである。


 是非とも永遠に味わっていたかったのだが、そうこうしている内に、どうやら目的地に着いてしまったらしい。


「ここだ。この通路の向こうが、二次試験……いや、最終試験の会場となっている。……非常に危険な試験だから、心して望んでくれ」


少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

外れ勇者1巻
4月24日発売!!!
― 新着の感想 ―
[気になる点] レウスの性癖
[一言] 師匠、次はおとなしくしてましょうね…又すぐ試験突破したら、目立ち過ぎますよと言いつつ、期待するボクがいます。本心では、やっちゃえと思ってます…続き楽しみに待ってます。頑張ってます。応援してま…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ