第80話 反省して罪を償ってね
俺のお尻の下で興奮しまくっているバハムートを余所に、盗賊たちを運ぶこと数分。
前方に街が見えてくる。
「あとは衛兵に任せればいいだろ」
街の入り口には衛兵の詰め所があるはずなので、その近くへ盗賊入りの結界を落下させた。
「じゃあ、ちゃんと反省して罪を償ってね」
「「「ぎゃあああああああっ!?」」」
どおおおんっ!
「何事だ!?」
「空から何か降ってきたぞ!? なっ……何だ、こいつらはっ!?」
驚いた衛兵たちが詰所から飛び出してきたところで、結界を解除。
「お、おい見ろ、これを!」
「盗賊……?」
彼らの胸には、「私たちは盗賊です」と書いた紙を分かりやすく張り付け、さらに親玉に精神操作の魔法を使っておいたので、自分から罪を自白してくれるだろう。
俺はくるりとターンし、元来た道へと引き返すのだった。
その後、無事にファナたちの馬車に追いついた。
途中の街で御者を代えつつ、旅をすること数日。
やがて目的地へと辿り着く。
「ここがベガルティアね」
「ん。大きな都市」
立派な城壁に囲まれた大都市だ。
この国でも有数の規模を誇るらしく、人口も多いという。
しかしアンジェが言うには、元々は片田舎の小さな街だったそうだ。
それが各地から移住者が増え、急成長していくこととなったきっかけは、街の近くに大規模なダンジョンが発見されたからだという。
それもこの国で最大級のダンジョンである。
ダンジョンから手に入る資源は非常に希少で、それを求めて大勢の冒険者たちや商人たちが集い、やがて現在のような大都市へと発展したというのだ。
「今でも一獲千金を目指して、国中から多くの冒険者がやってきてるのよ」
「だから冒険者の聖地」
「へ~。お姉ちゃんたちも過去に来たことあるの?」
「……あ、あたしは初めてだけど」
「同じく」
詳しいわりに、実際に来るのは初めてらしい。
まぁこの街のことは冒険者にとって常識なのだろう。
城門のところで検問を受ける。
「身分証を見せてもらおうか」
ファナとアンジェがギルド証を差し出す。
それを確認した衛兵が、ほう、と頷く。
「二人ともその歳でBランク冒険者か」
「ん」
「これからこの街でAランクの昇格試験を受けるのよ」
「Aランクの? それはなかなか……」
自慢げに宣言するアンジェに、衛兵は感心したように呟いてから、ニヤリと不敵に笑った。
「もっとも、この街じゃ、別に君たちの年齢で昇格試験に挑む者なんて少なくもないけれどな。その中でも実際に昇格できる奴なんて、ほんの一握りだ。十代で初めて挑戦して、結局そのままずっと合格できないまま……という人間も大勢いる。ま、せいぜい頑張るんだな」
衛兵の挑発的な言い方にアンジェが少しムッとしたところで、ファナに抱っこしてもらっている俺もギルド証を提示した。
「僕も身分証必要だよね? はい、これ」
「む? いや、赤子に身分証なんて……って、しゃ、喋ったああああっ!? し、しかもギルド証だと!? それにBランク!? どどど、どういうことだ!?」
「あ、僕は昇格試験は受けないよ」
「そういう問題ではない! というか本物なのか、このギルド証!? ……い、いや、確かに偽造などではない……本物だ……」
「確認は済んだわね。じゃあ、通らせてもらうわ」
「あっ、ちょっ……」
後ろがつかえているので、まだ何か言いたげな衛兵を余所に、さっさと通過させてもらった。
「僕は見せなくてもよかったみたいだねー」
変に目立たないつもりだったが、これくらいなら別に構わないだろう。
ずっと普通の赤子のフリしてるのもしんどいし、ちょっとだけ成長の早い赤子という絶妙なポジションを目指すとしよう。
「冒険者ギルドはどこなの?」
「たぶん、あれよ」
「あれって……」
アンジェが指さした先にあったのは、街のど真ん中に聳え立つお城である。
「領主の城じゃないの?」
「この街に領主はいないわ。冒険者ギルドが独立して治めてる都市だもの」
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