表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/317

第72話 現役じゃないんだし

 儂の名はドルジェ。

 ここボランテの街でギルド長をしている。


 Aランク冒険者として活躍した儂も、現役を引退して早十数年。

 しかし現在でも訓練を続け、時々魔物を狩ったりしているため、今でもそこらの冒険者に負けない力があると自負している。


 実際、現役のBランク冒険者と一対一で戦っても、ほとんど勝っているくらいだった。


 Aランク冒険者になるための試験には、ギルド長である儂の推薦が必要だ。

 その推薦の可否を判断するため、儂は自ら冒険者の相手をしているのである。


 儂と良い勝負をした奴なら、大抵は本試験にも合格できるだろう。


 現在この街を拠点にしている冒険者に中に、Bランクは全部で十五人いる。

 一人は規格外すぎるので除外するとして……この中でいずれ確実にAランクになれるだろうと考えているのは二人。


 ファナとアンジェ。

 どちらもまだ十代後半の若い女性冒険者だ。


 才能的にはAランクに到達するのに申し分ない。

 とはいえ、まだまだ経験も浅いし、現在の実力を考えればあと数年は先だろう。


 そう思っていたのだが……なんとたった二人で、危険度Aの魔物を倒してしまったという。


 巨人アトラス。

 俺も現役時代に戦ったことがあるが、途轍もないパワーと耐久力を持つ強敵だ。


 それを討伐したというのは、俄かには信じがたかったが、もし本当なら現時点で、すでにAランク相当の実力があることになる。


 そこで儂は、二人を相手に一対一の予備試験を行うことにしたのだ。


 相応の実力があればよし。

 なければこの辺りで一度、手痛い挫折を味わわせておいた方が、将来的に彼女たちのためになるだろう。


 若くして才能を開花させた奴というのは、どうしても傲慢になったり、胡坐をかいたりして、そこから伸び悩むことも多いからな。


「どちらからやる?」

「あたしから行くわ」

「ん。勝てそう?」

「どうかしら? 元Aランク冒険者っていっても、現役じゃないんだし」

「聞こえてるんだが……。アトラスを倒したからと言って、調子に乗っていては痛い目に見るぞ? 儂はまだまだお前たちのような小娘には負けん!」


 ……やはりイキがっているようだ。

 こいつはしっかりと思い知らせてやらねばならんな。


 どうやら最初はアンジェからのようだ。


「さあ、いつでもかかってくるがいい!」


 ハルバードを構え、意気揚々と宣言する。

 次の瞬間だった。


 アンジェが地面を蹴ったかと思うと、信じがたい速度で距離を詰めてきたのだ。


「……は、速っ!?」


 迫る拳を、ハルバードの柄で咄嗟に防ぐ。


「~~~~っ!?」


 お、重すぎる!?


 戦闘民族として知られるアマゾネスとはいえ、華奢な少女の拳だ。

 なのに、まるでハイオークの突進を喰らったかのような衝撃で、百キロ近くある儂の身体が吹き飛ばされてしまう。


 しかもたった一撃で腕がめちゃくちゃ痺れたんだが!?


「ちょっ……マジか……っ!?」

「はあああああああっ!」


 さらに容赦ない追撃。

 麻痺しかけた腕を必死に動かして、どうにか対応する。


 いやいやいやいや!?

 おかしいおかしいおかしい!


 儂は元Aランク冒険者だぞ!?

 何でここまで圧倒されているんだ!?


 現役時代には、ほとんど単身でアトラスを倒したことだってある。

 ……死にかけたりはしたが。


 ん、待てよ?

 ダンジョンの未発見領域にいたボスがアトラスだったと聞いた。


 ダンジョンに現れるボスモンスターというのは、通常種よりも凶悪化していることも多い。

 もし二人が討伐したのも、通常種を凌駕するようなアトラスだったとすれば――


「っ!?」


 って、消えた!?


 突如として予想外の動きをされ、アンジェの姿を見失ってしまったのだ。

 やばいやばいやばい!


 はっ!?

 背後から凄まじい気配が……。


「はぁっ!」

「ぶごおおおっ!?」


 振り返る暇もなく後頭部に強烈な衝撃が来て、儂の意識は暗転した。


少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

外れ勇者1巻
4月24日発売!!!
― 新着の感想 ―
[一言] あーあ 今までの報いだな
[一言] ギルド長が鼻っ柱折ろうとしてたけど、逆にギルド長の方が折られたように思う(苦笑い)続き楽しみに待ってます。頑張って下さい。応援してます。(*^▽^)/★*☆♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ