第69話 何かやらかしたパターンだわ
「~~~~~~~~~~ッ!?」
顔面にファナの突撃を喰らったアトラスは、叫び声を上げることもできなかった。
首がもげそうな勢いで頭から後方へひっくり返り、そのまま動けなくなる。
「た、倒せたのかしら?」
「……たぶん」
「さすがにもう体力も魔力も限界よ」
「同じく」
恐る恐る近づいて確認するファナたちだが、アトラスはやはりピクリともしない。
「うん。死んでるよ」
「「っ!?」」
急に俺が声をかけたからか、二人そろってビクッと肩を跳ねさせた。
「ちょっ、いきなり出てこないでよ!? びっくりするじゃないの!」
「ん。心臓に悪い」
猛抗議されてしまう。
「ともかく、二人とも良い戦いぶりだったよ。訓練で身に着けたことを、ちゃんと実戦に落とし込むことができていたし。戦いのセンスがある証拠だね」
ステータスが高かったとしても、実際の戦いにそれを活かし切れない者は多い。
そういう人は早く成長が止まってしまうため、なかなか大成しないものだ。
「……相変わらず赤子にそんなことを言われると違和感しかないわね」
「師匠は経験豊富」
街へと戻ってきた俺たちは、そのまま冒険者ギルドへと直行することになった。
というのも、そうすべきだとアンジェが強く主張してきたからである。
「あの未発見領域のこと、ギルドに報告しておかないといけないのよ」
「そうなの?」
「そりゃそうよ。中堅冒険者向けとされてるダンジョンだもの。万一、何も知らずに迷い込んじゃったりしたら大変でしょ。まぁ、あの小さな穴だと、そう入り込むようなこともないだろうけど」
「放っておいたらそのうち穴もなくなるけどね」
「……どういうことよ?」
「ダンジョンに無理やり開けた穴は、いずれ修復されちゃうんだ。知らないの?」
「知るわけないでしょ……」
ダンジョンは自己修復機能を持っている。
そのため壁や床を破壊しても、時間が経てば自動的に元通りになってしまうのだ。
「その仕組みを利用すれば、ダンジョン壁から無限に鉱石素材を得ることもできるよ」
「ダンジョン壁を素材に……?」
「うん。強い魔力を帯びてるから、精錬すれば通常よりずっと丈夫な金属になるんだ」
アダマンタイトの素材となる、希少鉱石が採れることもある。
まぁそれはもっと高難度のダンジョンの話で、あの『岩壁の洞窟』にはないだろうが。
「でも、魔物の素材も売りたかったし、ちょうどよかったかな」
「もしかしてアレも出すつもり?」
「アレって、アトラスのこと? もちろんだよ。亜空間の広さも無限じゃないんだから」
「……」
そんなことを話していると、ギルドに辿り着いた。
いつもお世話になっている受付嬢のイリアのところへ。
「あれ、珍しいですね? ファナさんとアンジェさんが一緒だなんて」
「ん。仲良くなった」
「べ、別に仲良くはなってないし! ただあんたと目的が被ってるから、仕方なく一緒にいるだけよ!」
「……目的、ですか?」
「師匠から指導を受けてる」
「師匠……?」
首を傾げているイリアに、俺はカウンターの上へ顔を出しながら挨拶する。
「イリアお姉ちゃん、こんにちは」
「っ!? レウスくん!? 君も一緒だったの?」
「ん。レウスが師匠」
「……どういうことかしら?」
俺はイリアに説明した。
「お姉ちゃんたちに色々教えてるんだ」
「そ、そうなの……。Bランク冒険者に、赤子が指導を……言葉だけ聞くと意味不明だけど、まぁレウスくんだものね」
呆れ顔で納得するイリアが訊いてくる。
「それで今日はどんな要件かしら?」
「えっとね」
「ちょっと待った!」
「……?」
俺が話そうとすると、横からアンジェが割り込んでくる。
「あたしが代表して話すわ。イリア、心の準備をしてから聞いてちょうだい」
「あ、これまたレウスくんが何かやらかしたパターンだわ……」
イリアが頬を引き攣らせた。
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