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生まれた直後に捨てられたけど、前世が大賢者だったので余裕で生きてます  作者: 九頭七尾


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第342話 やっと大人しくなったな

『マリベル!』


 ウロボロスから落ち、床に叩きつけられそうになったマリベルを、ジルニトラがすんでのところでキャッチする。

 マリベルは気絶していた。


 次の瞬間、視界が変わる。

 気づけば亜空間から、セノグランデ号・快が墜落した現場のすぐ近くに戻ってきていた。


 マリベルが気を失ったことで、亜空間から吐き出されたようだ。

 考えてみれば、あの亜空間も彼女の魔力によって作り出されていたもので、膨大な魔力を消費していたはずである。


『本当に厄介なやつがウロボロスの封印を解いてしまったわけだ。まぁ、そうじゃなければあの封印は解けないはずだが』


 ともあれ、これで杖を使うマスターはいなくなった。

 仮にウロボロスがこの場にいる別の人間を新たに支配しようとしても、魔法使いとしてはマリベルの足元にも及ばない者ばかりだ。


『お気を付けください、マスター。これで諦めるような杖ではないはずです』

『……そうだよな』


 そのときである。

 宙に浮かんでいたウロボロスが、その膨大な魔力を解放したのは。


 円環の杖が見る見るうちに巨大化していく。

 やがて現れたのは、虹色に輝く鱗を持つ一体のドラゴンだ。


『やはりか……っ!』


 無限竜ウロボロスが、その本来の姿を顕現させたのである。


「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」


 自らの尾を咥えながら凄まじい咆哮を轟かせるウロボロス。

 その圧倒的な存在感に、フェンリルであるリルですら、ぶるりと身体を震わせて後ずさった。


「ワオオオオオオオオオオオオンッ!!」


 すかさず自らも本来の姿を取り戻す。

 人化したままでは相手にすらならないと本能的に悟ったのだろう。


「ん……」

「ば、化け物じゃないの……」

「人間が対峙するような相手ではないでござる……っ!」


 ファナ、アンジェ、カレンの三人娘も、頬を引き攣らせながら武器を構えている。


 そんな彼女たちを嘲笑うかのように、円環を成すウロボロスの身体の周囲に、幾つもの魔法が展開されていく。

 火、土、雷、風、水、氷、重力――七種類の魔法をすべて同時に放とうとしているのだ。


 直後、目の前に世界の終りのような光景が広がった。


「「「~~~~~~~~っっっっっ!?」」」


 咄嗟に空に逃げようとしたファナは雷撃に追いつかれて撃墜され、土の壁で身を護ろうとしたアンジェはその壁ごと凍り付き、斬撃で迫りくる颶風を斬り裂こうとしたカレンは失敗して宙を舞った。

 リルもまた強烈な重力で頑丈なその巨体を圧し潰され、地面にめり込む。


 転移魔法で咄嗟に逃れていた俺以外、たった一度の攻撃で全滅――


「リンリン、あれを使うぞ」

『……仕方ありませんね。しかし残存魔力が乏しいため、前回よりさらに使用時間に制限があります』

「問題ない。一瞬で片を付ける」




「――一時発育急進魔法」




 己の寿命を犠牲し、自分の肉体を一気に成長させるという魔法である。

 魔法都市で魔王アザゼイルを倒したときにも使ったもので、できればこいつに頼りたくはなかったのだが……。


 俺は全裸の長身イケメンへと変身していた。

 亜空間から勇者装備を取り出し、身に着ける。拒絶反応による反動が怖いが、そんなことは言ってられない。だって全裸だから。


「いくぞ」


 勇者の剣とリントヴルムの二刀流でウロボロスに立ち向かう。

 ウロボロスもまた七種の魔法を同時展開した。


「だったらこっちも七種だ」


 ウロボロスに対抗し、俺もまた火、土、雷、風、水、氷、重力の七種の魔法を展開する。

 直後、同じタイミングで魔法を撃ち放った。


 七種の魔法と七種の魔法が激突する。

 ただ、ぶつかったのはそれぞれ別種の魔法同士だった。


 俺の火魔法がウロボロスの氷魔法を溶かし、俺の水魔法がウロボロスの風魔法を圧し潰し、俺の土魔法がウロボロスの雷魔法を放電させる。

 唯一、同じだった重力魔法は、互いの威力が拮抗して相殺された。


「ッ!?」

「知ってるか? 魔法には相性ってものが存在するんだぜ?」


 相性勝ちした一部の魔法がウロボロスに届く。


「オアアアアアアアアアアッ!?」


 巨躯を捩らせながら苦痛の雄叫びを轟かせるウロボロス。

 まだ魔法の余波が残る中、俺は構わず突っ込んでいった。


 闘気と魔力を勇者の剣に全集中させていく。

 それに気づいたウロボロスは、慌てて距離を取ろうとするも、


『させません』


 リントヴルムが強烈な光のブレスを放つ。

 眼球を狙ったそれはすんでのところで回避されたが、その間に俺はウロボロスへと距離を詰め切っていた。


「おおおおおおおおおおおおおおっ!」


 渾身の斬撃を叩き込む。


 ザンッ!!


 オリハルコン製の剣が、ウロボロスの円環を断ち切った。


「~~~~~~~~~~ッッッッッ!?」


 声にならない咆哮と共に、両断されたウロボロスの身体が地面に墜落する。

 と同時に、見る見るうちにその巨体が小さくなっていく。


「この無限竜としての姿を維持できなくなったみたいだな」

『ウロボロスにとって、円環である状態を失うのは致命的なことなのでしょう』


 やがて杖の姿に舞い戻ってしまったところへ、俺はすかさず封印を施そうとする。


『や、やめろ……っ! またオレたちを退屈な眠りに追いやる気かあああああっ!? クソったれがああああっ!』


 赤の竜格が必死に念話を飛ばしてくるが、無視して何重もの封印をかけていく。

 やがて鱗が輝きを失った灰色と化すと共に、念話が途切れた。


「……ふう。やっと大人しくなったな」


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