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生まれた直後に捨てられたけど、前世が大賢者だったので余裕で生きてます  作者: 九頭七尾


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第340話 どうせなら最期のときは

 虹竜杖ウロボロス。

 元々は無限竜ウロボロスと呼ばれていた、神話時代のドラゴンだ。


 破壊と再生を司るとも言われ、ウロボロスは過去に幾度となく人類に牙を剥き、大災厄をもたらしてきた。


 そんなウロボロスの出現を知った前世の俺は、死闘の末に討伐に成功。

 大災厄を未然に防ぐことができた。


 だがウロボロスは何度でも蘇る。

 このままでは将来、再び新たなウロボロスが現れ、人類に多大な被害をもたらすだろうと考えた俺は一計を案じだ。


「杖にしちゃえばいいんじゃね?」


 生かさず殺さずの状態にしておけば、新たなウロボロスが誕生する心配はない。

 しかも強力な杖として利用できるなんて一石二鳥だ。


 そうして虹竜杖ウロボロスを生み出したのだが――


「あかん、こいつ全然コントロールできないし、杖の状態でも危険すぎる。隙あらば俺を殺そうとしてくるし……いったん封印しておこう」


 リントヴルムやバハムートのように杖として使用することは諦め、何重もの封印を施した上で、禁忌指定物として大賢者の塔の保管庫に入れておくことになったのだった。







『殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね』


 黄色い鱗のドラゴンとなった虹竜杖ウロボロスが、猛烈な雷の豪雨を降らす。

 俺は縮地を駆使しながらどうにかそれを回避していくが、落雷の余波を何度も浴び、小さな身体にどんどんダメージが蓄積していく。


「おっ……ようやく雷が収まった……?」


 肩で息をしながらウロボロスの方を見ると、ウロボロスの頭が再び自分の身体を呑み込み、黄色から緑色の鱗へと変貌するところだった。


「やった、緑ってことは風魔法だな。雷魔法よりはまだマシだ。ちょっと休める」

『……今、休めるって言いましたの? ふふふ、わたくしのことを随分と見くびっておられるようですわねぇ? 舐めんじゃねぇよ死ねやボケカスがあああああああああああっ!!』


 丁寧な口調から一転、いきなり口汚い言葉で罵ってきた。

 一つの竜格なのに二重人格みたいになってる……。


 亜空間内に凄まじい風が吹き荒れた。

 俺の小さな身体はあっさりと宙を舞い、高速回転の渦に巻き込まれる。


「目が回るぅぅぅぅぅっ!」


 そこへ逆回転する別の竜巻が迫ってきた。

 このまま二つの竜巻がぶつかったら最後、俺はズタズタに身体を引き裂かれてしまうだろう。


「転移」

『ふふふ、どうせ頭の悪いあなたのことだから、それを使って逃げると思ってましたわ、その場所に』

「なっ!」


 他の地点と比べ、風の勢いが弱いところを狙って転移したのだが、その瞬間に頭上から砲撃のような風圧が降ってきて、俺は地面に叩きつけられてしまった。

 どうやら俺は誘導されてしまったらしい。


「ああああああああっ、つ、潰れるぅぅぅ~~~~っ!?」

『ふふふ、感謝してくださいな。あえて弱めにしてあげていますのよ。だって、たっぷり泣いて喚いて苦しんでいただかなければ、わたくしたちの溜飲は下がりませんもの』

「~~~~っ!」


 肺が圧迫され過ぎて息ができない。

 骨の何本かが折れる音がした。


『あら、思ったよりも脆弱なのですわね。この程度でもう終わりだなんて……。もう少し楽しみたかったけれど、仕方ありませんわね。そのまま蛙のように醜く潰れて死ぬといいですわ。っ……ちょっと待ってくださいましっ! まだ交代のタイミングではおいコラてめぇマジで――』


 またしてもウロボロスの色が変わる。

 今度は青色だった。


『トドメ。私。刺す』


 風が収まり、どうにか呼吸ができるようになったところへ、今度は大量の水が津波のように襲いかかってきた。

 あっという間に呑み込まれてしまう。


『水中生活魔法』


 何とか水の中でも呼吸が可能になる魔法を発動し、窒息は免れたものの全身はボロボロだ。

 さらに水圧でまたも身体を圧し潰されながら、水流で揉みくちゃにされる。


『内外聯絡(れんらく)式完全再生魔法』


 治癒魔法でダメージは回復させたが、先ほどから防戦一方で成す術がない。

 どうにかこちらから攻撃を仕掛けようとしているものの、マリベルとウロボロスは常に高速で飛び回っている上に、ちょっとやそっとでは破れないような結界を何重にも展開させているときた。


 そのとき亜空間の大部分を満たしていた水が、急速に凍り始めた。

 ウロボロスの色が青から藍色に変わっている。


『……世の理を……逸脱せん貴様に……永久なる……死を……与えん』


 ボソボソと何やら小声で呟いている青色は、氷魔法を大幅強化させる竜格だ。

 周りの水が完全に凍り付き、俺は氷の檻の中に閉じ込められてしまった。


 だが一か八か、今が最初にして最大のチャンスだ。

 元より亜空間の大部分を占めていた水が凍ったことで嵩を増したお陰で、マリベルとウロボロスが動き回れる空間がかなり狭められたのだ。


 恐らく二度目のチャンスは来ない。

 これで決めるしかない。


「転移」


 俺はマリベルの背後に瞬間移動すると、残る魔力を振り絞りながら全力の魔力砲を放った。

 マリベルは回避し切れず、結界にそれが激突し、破壊する。


 しかし何枚か結界を突破したところで、マリベルとウロボロスが魔力砲の直撃軌道から逃れてしまう。

 どうにか最後の結界を砕くも、残念ながら俺の渾身の魔力砲はマリベルの肩を掠めるだけに終わり、後方の氷塊を貫いていった。


「外した……か」


 そのまま俺は氷の上に落下する。


 もう魔力はほぼゼロだ。

 転移魔法はおろか、飛行魔法すらも使えないだろう。


『……咎人に……静寂なる死を……』


 そんな俺に向かって、槍のような氷塊で今度こそトドメを刺そうとする藍色のウロボロス。


 迫りくる氷槍。

 俺にはもはやそれを防ぐ力は残っていない。


 短い転生後の人生だったな……思えば転生魔法そのものが、輪廻転生を繰り返しているウロボロスからヒントを得たものだった。


 もしかしたら俺は、神々のルールに抵触したのだろうか。

 となれば、これはウロボロスを通じて、神々から引導を渡されていると言えるかもしれない。


「ああ……けど、どうせなら最期のときは……大きなおっぱいに抱かれながら死にたかったな……」


 バギイイイイイイイイイイイイイイイイインッ!!


 いきなり氷槍が粉砕される。

 何かが割り込んできたかと思うと、それを()()砕いたのだ。


『こんなときに酷すぎる台詞ですね、マスター。それが最期の台詞にならず本当によかったと思います』


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生活無双
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