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生まれた直後に捨てられたけど、前世が大賢者だったので余裕で生きてます  作者: 九頭七尾


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第335話 良い勝負かと

「それではこれよりSランク認定式を執り行いたいと思います」


 昇格試験の終了後、認定式とやらが行われた。


「冒険者ギルド協会会長、よろしくお願いいたします」

「はああああい♡」


 ランディアに呼ばれてどこからともなく大きな返事が響いたかと思うと、訓練場の天井付近に巨大な人影が出現する。


「あたしが協会長のマリベルちゃんよぉ。よろしくねぇ」


 空中を浮遊しながらゆっくりと降りてくるのは、身長165センチほどながら推定体重150キロはあるだろうおばさんだった。

 だらしのないぶよぶよの贅肉に全身を覆われていて、ゴリティーアとは違う方向の巨漢だ。


『こんなやつが隠れていたのか。かなり高度な隠密魔法だぞ』

『そうですね。わたくしの索敵にも引っかかりませんでした』


 大きなお尻に埋もれていて分かりにくいが、よく見ると杖に跨っている。


『あんな重い身体を乗せられて可哀そうな杖だな……』

『卑猥な赤子ジジイを乗せなければならないわたくしと良い勝負かと』


 冒険者ギルド協会の会長だというそのおばさん、マリベルは嬉しそうな笑みを浮かべながら二人の合格者を讃えた。


「二人の戦いぶり、おばちゃん、ずっと見せてもらっていたわぁ。もちろん一次試験からの話よぉ。二人同時に昇格なんてなかなかないんだけど、どちらもSランクに相応しい力を持ってるんだから仕方ないわよねぇ」


 そして二枚のカードのようなものが、ファナとアンジェの目の前に落ちてくる。


「ん、虹色」

「ほんとだわ。Aランクは金色だったけれど虹色になってるわね」


 どうやらSランクのギルド証らしい。


「オリハルコン製の特別なカードよぉ。失くしたら再発行にすんごいお金がかかっちゃうから、絶対に失くさないでちょうだいね?」

「「オリハルコン……」」


 マリベルは満足そうに頷いてから、


「それじゃあ、恒例のエキシビジョンマッチをやるわぁ!」

「「エキシビジョンマッチ?」」


 聞きなれない言葉にファナとアンジェが首を傾げていると、突然、マリベルの身体から魔力が膨れ上がった。


「「っ!?」」


 咄嗟に距離を取り、身構えるファナとアンジェ。


『……おいおい、なんて魔力だ』

『凄まじいですね。これほどの魔法の使い手がこの時代にも存在したなんて』


 予想を超える魔力量に、俺とリントヴルムもそろって息を呑む。

 正直言って、魔法都市を支配していたデオプラストスを大きく凌駕している。


「うふふ、良い反応ねぇ。Sランクに昇格した冒険者は、おばちゃんと戦うの。もちろん昇格試験はもう終わってるから、それとはまったく無関係の、ただのおばちゃんの戯れね、戯れ。それがエキシビジョンマッチ」


 観客席では、ゴリティーアやバザラが苦笑している。

 彼らも同じことを経験しているようで、


「Sランクに昇格して浮かれてたら、協会長に圧倒的な力で叩きのめされちゃうのよねぇん」

「まだまだ上には上がいることを痛感させられ、強制的に気を引き締めることになった」


 手も足も出なかったようだ。


「え、Sランク冒険者でも敵わないってマジ?」

「生きる伝説と言われてるほどだからな、協会長は」

「誰かがSSランクって言ってた」


 他の冒険者たちがざわついている。


「いつもは一対一なんだけど、二人いるから二人同時で構わないわぁ」


 そう告げながら、右手で無数の火球を、左手で無数の氷矢を作りだすマリベル。


「それじゃあ、エキシビジョンマッチ、開始よぉ!」


 火球と氷矢の豪雨が、ファナとアンジェに降り注いだ。

 ファナは二本の剣で叩き落し、アンジェは土の壁を作り出して防ぐ。


「うふふ、さすがにこの程度は軽く凌いじゃうわねぇ。でも、これならどうかしらぁ?」


 再び無数の火球と氷矢が現れると同時に、今度は訓練場の床が蠢き出したかと思うと、土の槍が次々と二人に襲いかかる。


「「っ!?」」


 さらに上からは火球と氷矢で、上下から挟み込むような容赦ない魔法の猛攻。

 これをファナは猛スピードで移動することで逃れ、一方のアンジェは分厚い土の鎧を身に纏って耐え忍んだ。


「ふっ!」


 ファナは訓練場の壁を蹴って跳躍し、一気にマリベルへと迫った。


「あら、もうこんなに近くに。怖いわねぇ」


 そんなことを言いながらも余裕たっぷりなマリベルは、高度を上げてファナから距離を取ろうとする。

 ファナはそのまま追い縋るも、なかなか追いつくことができない。


「……速い」


 あれだけ重量のある身体ながら、マリベルの飛行能力が非常に高いのだ。

 ならばと、距離が縮まらないまま、ファナは二本の剣を振るった。


 すると斬撃が虚空を斬り裂き、マリベルへと迫る。

 だが彼女の身体に届く前に、何かにぶつかって弾かれてしまった。


「結界?」


 マリベルは自分の周囲に結界を展開していたのだ。

 それもかなり強固なもので、並の攻撃ではまず破ることができないだろう。


「あの結界を破壊するには直接叩くしかないよ。だけど追いつかなければそれは難しいね」

「どうやって攻略すればいいのでござる?」


 ズゴンズゴンズゴンズゴンッ!!


 そのときマリベルを包囲するように土の壁が出現。

 マリベルは急停止した。


 上へと脱出を試みようにも、すかさずファナが待ち構える。


「ふふっ、なかなか良い連携ねぇ」


 しかしマリベルはアンジェの壁に真っすぐ向かっていったか思うと、魔力の籠った杖で叩く。

 すると壁がドロリと溶けて穴が開き、そこから悠々と脱出してしまう。


「あれは何をしたのでござるっ?」

「あの土壁は魔力によって固めているものだからね。自分の魔力をぶつけることで分解させたんだ。魔法に関しては二人と力の差があり過ぎるから、あのおばちゃんを直接、魔法で止めるのは難しいよ」


 ベガルティアのダンジョンボスには有効だったやり方だが、マリベルには通じないだろう。


「それにしても……やっぱり二人同時を相手にするのはなかなかキツイわねぇ」


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