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生まれた直後に捨てられたけど、前世が大賢者だったので余裕で生きてます  作者: 九頭七尾


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第331話 それはまた別の話かな

「これでどうかしら? そろそろ本気を出す気になったでしょ」

「………………ああ、十分だぜ」


 ゴリティーアの口調が変わった。


 ()は普段、自身の性格を〝乙女〟に矯正することで、強制的にその力を抑え込んでいる。

 だが今、〝漢〟の自分を解放したのだ。


「ん、すぐ本気になった」

「武闘大会のときはかなりダメージを受けてからだったしね。本気じゃないと、今のアンジェには敵わないと判断したんだよ」


 開始からまだ一分も経っていない。

 それだけアンジェが強くなったということだ。


「こんなに早くオレを本気にさせたやつはお前さんが初めてだ。残り九分と少し……フルパワーでいってやるからオレを楽しませてくれよっ!」


 解放された凄まじい闘気で、訓練場内の空気が震え、慄く。

 この場に集っているのは無限の荒野に挑む力を持つ猛者たちばかりだが、それでもゴリティーアの闘気に圧倒されている。


「行くわよ!」

「行くぜぇぇぇっ!」


 今度は両者が同時に距離を詰めた。

 爆発的な加速によって一瞬で接近すると、互いに拳を繰り出す。


 ドオオオオオオオオオオオンッ!!


 拳と拳が轟音と共に激突し、衝撃波が同心円状に広がって訓練場の壁や天井がミシミシという音を響かせた。


 さらにそこから両者が拳と蹴りを幾度となく放ち、ぶつかり合うたびに落雷のような音と衝撃が発生していった。


「あの状態のゴリティーアと互角に渡り合っている!?」

「むしろスピードでは上回っているぞ……」

「パワーでも負けていない。いや……下手をすれば、それも互角以上……」


 観客の冒険者たちが息を呑む中、少しずつ押され始めているのはゴリティーアの方だった。

 パワー負けしているというより、アンジェが僅かに速度で勝っていることから、力がまだ乗り切らない不利なタイミングで打ち合わされていると言った方がいいだろう。


「はっ、なかなかやるじゃねぇか!」


 ゴリティーアは大きく後ろに跳躍し、いったん距離を取ると、拳に闘気を集束させ、


「気功弾っ!!」


 凝縮させた闘気を放出させ、相手に大ダメージを与える大技だ。

 武闘大会で敗北を喫する決まり手となったそれを、アンジェは、


「どらあああああっ!!」


 気迫と共に拳で弾き飛ばした。


「……は?」


 ゴリティーアが思わず頓狂な声を漏らす。


「ま、マジかよ……オレの気功弾っ……殴り返しやがっただと!?」


 驚嘆するゴリティーアを余所に、アンジェもまた拳に闘気を集め、


「その技っ……そっくりそのままお返ししてやるわっ! はあああああっ、気功弾っ!」

「~~~~っ!?」


 闘気の砲弾が今度はゴリティーアに迫る。


「っ……ぬおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」


 両腕で咄嗟にガードしたゴリティーアだったが、受け止め切れずに吹き飛ばされ、そのまま後方の壁に激突してようやく停止した。

 そこへ間髪入れずに追撃するアンジェ。


 壁際に追い込んだ状態で放つ容赦のない連撃を、さすがのゴリティーアも捌き切れない。

 筋肉の鎧に覆われた身体に、何度もクリーンヒットが入っていた。


「がっ……ぐっ……一発一発が、なんて重さだ……っ!」


 そのたびに顔を歪めているので、かなり効いていることは間違いない。


「うん、完全に()()()ね」


 二人の戦いを観客席から見ながら、俺は確信した。


「すでにアンジェは、ゴリティーアより強くなった。あの武闘大会で戦ったときは、Sランク冒険者の強さに圧倒されていたというのに」

「となると、このまま勝ってしまうでござるか?」

「いや……それはまた別の話かな」

「え? どういうことでござる……?」


 首を傾げるカレンに、俺は予測を口にする。


「確かにステータス上は、明らかにゴリティーアを超えてる。だけど……戦いはそれだけで決まらないからね」


 と、そのときゴリティーアがいきなり哄笑を響かせた。


「ふっ、ふはははははははははははっ! いいぞぉっ! 最高だっ! この短期間でオレの強さに追いつくどころかっ……凌駕してきやがるとは思わなかったぞっ! だがっ……勝負となると、話は別だぁぁぁぁぁぁっ!」

「っ!?」


 突然、ゴリティーアが圧力を強めたかと思うと、一気にアンジェを押し返す。

 これまで完全に優勢だったというのに、逆に防戦一方となり、アンジェの顔に焦りが見える。


「理由は経験値。アンジェは一気に強くなったし、当然その過程で多くの経験を積んだかもしれない。でも……まだ17歳の女の子だ。たぶん軽く30歳を超えているゴリティーア相手には、さすがに経験の差を埋められない」

「経験の差、でござるか?」

「うん、具体的には……例えば、相手の癖を見抜く力」


 アンジェが繰り出す拳。

 だがそれをまるであらかじめ読んでいたかのように、ゴリティーアは先んじて有利な体勢に移行すると、自分の拳で受け流してしまう。


 ゴリティーアは、この短い時間の攻防の中で、アンジェの動き出しの癖を見切り、対応してみせたのだ。

 徐々に攻撃が空回りし始めたアンジェは、ゴリティーアの強烈なカウンターを何度かまともに貰ってしまう。


「ぐっ……」

「仮にステータスで負けていても、オレが過去に蓄積してきた膨大な経験値でお前さんの隙や技を見抜いてしまえば、戦いは有利に進めていくことができる!」


 さすがは経験豊富なSランク冒険者といったところだろう。


 だがアンジェもまた、この程度で意気消沈するような性格ではない。

 アマゾネスらしく、かえって闘争心を剝き出しにすると、


「ふっ、さすがねっ! むしろ、あのまま一方的に勝っていたら拍子抜けしていたところよ! 面白くなってきたわっ!」


 ますます両者の攻防が激しくなっていく。

 残り時間は、5分。


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生活無双
12月17日発売!!!
― 新着の感想 ―
つーか、本気を引き釣り出した時点で合格で勝負辞めさせていいんじゃ?
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