第330話 ご指名よかったですね
「お待たせいたしました。試験官の準備ができましたので、これより最終試験を行いたいと思います」
ランディアに連れられ、冒険者ギルド協会本部の地下にある訓練場へ。
「最終試験の内容ですが、試験官を相手に10分間、一対一の戦闘を行っていただきます。互角以上の戦いができれば合格。晴れてSランク冒険者の仲間入りです」
どうやら最終試験は対人戦闘らしい。
「突破率はざっくり50パーセントほどでしょうか。ここまでの試験をクリアしてきた時点で実力は間違いありませんので、これまでよりは突破率が高くなっています」
それでも二人のうち一人は不合格となるわけなので、簡単な試験ではない。
しかしここまで勝ち残った冒険者を相手に、互角以上の強さを持つ試験官となると、確かに用意するのはなかなか難しそうだ。
見学しても問題ないとのことだったので、俺やカレンも今回は直接、訓練場で見せてもらうことにした。
二階部分に観戦席が設けられていて、そこには一次、二次で失格となった受験者たちや、無限の荒野に挑戦中の冒険者たちの姿もあった。
「ん、試験官は、誰?」
「あちらにいらっしゃいます」
「三人いるわね。全員、仮面とマントと姿を隠しているけど」
仮面とマント姿の怪しい三人組が並んで観戦席に座っていた。
彼らが試験官だというが……。
「うーん、なんか約一名、どこかで見たことある髪型とシルエットなんだが」
仮面では隠しきれない髪型と、マント越しでも分かる筋骨隆々の巨体に、俺は嫌な予感を覚える。
「正体は始まってからのお楽しみということで。では早速、一人目の最終試験とまいりましょう! どなたから挑戦されますか?」
ランディアの問いかけに、真っ先に手を上げたのはアンジェだった。
「あたしから行くわ!」
かなり気合が入っている。
「よろしいですか?」
「ん、問題なし」
「ぼくも問題ないよ」
ファナとオリオンが同意を示し、アンジェは訓練場の中心へと進む。
一方、観客席にいた仮面マントの一人が立ち上がり、そこから跳躍してオリオンの数メートル手前に着地した。
先ほどの筋骨隆々の仮面マントだ。
「うふぅん、まさか、こんなに早くここまで来ちゃうなんて。さすがねぇ、アンジェちゃん」
「っ……あたしのことを知ってる? あんた、何者よ!」
いや分かるだろ!
そんな特徴的な体格と野太い声と喋り方のやつなんて他にはいない。
「アタシよぉん!」
仮面とマントを豪快に脱ぎ捨てると、現れたのはやはりあの漢。
オリオンの故郷、アルセラル帝国で開催された武闘大会に出場していた、Sランク冒険者のゴリティーアだった。
身長二メートル超の凄まじい筋肉の持ち主ながら、女装している変態野郎だ。
「ゴリティーア!?」
「思い出してくれたみたいねぇ♡ そう、アナタの最終試験の相手をするのは、この美のカリスマ、ゴリティーアよぉん! チュッ!」
自称・美のカリスマが嬉しそうに投げキッスをする。
それからなぜか観客席にいる俺の方を見て、
「レウスちゃんもお久しぶりねぇっ! 相変わらずとぉってもかわいいわぁん! 後でまた抱っこさせてちょうだいねっ♡」
そんなことを言いながら恐怖のウィンクを飛ばしてくる。
『ご指名よかったですね、マスター』
『全然よくねええええええええええっ! 雄っぱいはお呼びじゃねえって言ってんだろうがああああああああっ! だから会いたくなかったんだよおおおおおおおおおおおおおおおっ!』
あの雄っぱいに顔を押し付けられたときのトラウマが脳裏に蘇り、俺は観客席で咽び泣く。
「あらぁん、あんなに喜んでくれて……アタシったら感激しちゃうわぁん」
違ぇよおおおおっ!
「あんたが試験官だったのね! いつか再戦してぶっ倒してやりたいと思っていたんだけど、今ここで試験官として相手をしてくれるなんて一石二鳥よ!」
二人はその武闘大会で激突し、そのときはアンジェが破れている。
「あらぁん、随分と自信満々ねぇん」
「あれからあたしは強くなったわ。今なら……あんたにも勝てる!」
闘志を燃やすアンジェ。
ランディアが宣言した。
「因縁の相手ということで盛り上がってまいりましたね! ではこれより、アンジェ氏の最終試験を開始いたしましょう!」
合図とともに仕掛けたのはアンジェだ。
武闘大会のときと同様、一気に距離を詰めていく。
アンジェの回転蹴り。
それをゴリティーアは右腕でガード。
ここまで武闘大会のときとまったく同じ流れだったが、
「~~~~~~~~っ!?」
ゴリティーアの巨体が大きく逆側に傾き、よろめいた。
あのときは片腕でアンジェの蹴りの衝撃を完璧に殺していたが、今回は完全にその威力に負けてしまっている。
さらに追撃の拳を放つアンジェ。
体勢を悪くしたゴリティーアは、なんとかそれを両腕で受けるが、凄まじい衝撃と共に身体が一瞬、宙に浮く。
「はああああああああああああっ!」
そこからアンジェの猛ラッシュ。
一発一発の威力もさることながら、その回転率の速さに反撃の隙を封じられ、ゴリティーアはひたすら防御に徹するしかない。
最後に放った渾身の蹴りが、ゴリティーアの腹を穿ち、巨体が吹き飛んでいった。
「え、試験官って、あっちの筋肉の方だよな?」
「おいおい、強すぎだろ」
「Sランク冒険者の、ゴリティーアをあんなに一方的に……」
衝撃的な展開に、見学に来ていた冒険者たちが唖然としている。
「これでどうかしら? そろそろ本気を出す気になったでしょ」
「………………ああ、十分だぜ」
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