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第311話 貧乳に親でも殺されたのですか

「なるほど、浮遊島でございますか。また珍しいものを発見されましたね。しかも、かつての大賢者の塔の魔法使いたちが、レウス様の造った魔導飛空艇で移住していたとは」


 中央塔の最上階で、俺はメルテラに浮遊島での出来事を話していた。

 三賢人と言われていた、アウィケ、モニデス、ドマースの三人のことを、彼女も覚えていたようだ。


「俺が死んだとき、ベレテッテグロッセ号は大賢者の塔にあったはずだが、彼らが勝手に持ち出してしまったんだな」

「そうでございますね。ただ、レウス様がご存命の頃は、塔と外界を行き来するための定期便として頻繁に使用されていましたが、その後の衰退に伴って段々とそれもなくなり、いつしか格納庫に仕舞い込んだままになっていました」

「そうなのか」


 死後のことだから仕方ないとはいえ、なんとも残念な話だ。


「はい。ちなみに、外観があまりにも卑猥でございましたし、構成員たちは可能なら乗りたくないと申していましたよ」

「芸術を理解できないやつらめ!」

『そもそも芸術として造ったものではないでしょう』


 こちらの土産話に続いて、俺はこの都市の統治状況について訪ねた。


「それでどうだ、魔法都市は?」

「一時は急な改革に伴う混乱によって治安が悪化した部分もございましたが、それも随分と落ち着いてまいりましたよ。混乱に乗じて闇に潜ってしまっていた禁忌指定物も、あらかた一掃できたかと思います」

「さすがだな。やはりメルテラが適任だった」

「……無理やりこの魔法都市の大賢者にさせられたときは、また殺してやろうかと思いましたが」


 また、って。

 さすがに笑えないぞ……?


『冗談などではなく本気だったのでしょう』


 ひぃっ。


「けど、俺が統治してたら間違いなく大変なことになってたぞ? 豊胸剤を大量生産させて、若い女性にそれを飲むことを義務づけていたはずだ。さらに都市全体を魔法で常に温暖な気候を維持して、薄着に――」

「どうやらわたしが治めて正解だったようでございます」


 冷たい目で断言するメルテラ。

 あ、なんかこのまま得意の氷魔法を撃たれそう、と思った俺は、別の話題へ。


「それで、()()()は見つかったのか?」


 その問いに、メルテラの表情が曇る。


「……残念ながら、まだでございます」

「そうか。……あれはかなり危険だからな。せめてこの都市のどこかにあればいいんだが」


 デオプラストスによって盗まれた禁忌指定物。

 その中で最もヤバい代物が魔王の心臓で、それは今、俺が亜空間にしっかり保管しているので問題ない。


 だが下手をすればその危険性において、魔王の心臓すら凌駕するかもしれない禁忌指定物が、行方不明なのだ。

 あれもこの魔法都市にあると思っていたのだが……。


「かなり念入りな封印を施していたはずだから、どこかで眠っているとは思う……たぶん」

「わたしの方でも改めて都市内を探してみましょう」

「そうだな、よろしく頼む」







 魔法都市を後にした俺たちは、ベガルティアに向かっていた。


「ん、懐かしい」

「みんな元気にしてるかしら?」


 ベガルティアは冒険者の聖地と呼ばれる都市だ。

 都市内にある大規模なダンジョンを中心に発展してきたゆえに、冒険者ギルドが非常に強い力を有し、国から独立して完全な自治を行っていた。


 反冒険者ギルド組織と戦ったり、魔族が率いるアンデッドの大群と戦ったり、色々あった都市でもある。


『マスター、なぜまたベガルティアに?』

『ダーナに教えていたら、久しぶりにコレットとゼタの様子も確かめたくなってな』


 コレットは、俺が魔力回路の治療法を伝授した巨乳の女の子だ。

 一方、ゼタは俺が鍛冶の神髄を教え込んだ巨乳のお姉さん鍛冶師である。


『……胸の大きな女性ばかりですね』

『貧乳に教えられることなんてないからな』

『貧乳に親でも殺されたのですか?』


 やがてベガルティアが見えてきた。


「大きな街でござるな」

「うん、冒険者の多い都市だけど、だからこそ歓楽街なんかも充実していて、とっても楽しいところなんだ」


 ベガルティアには初めて来たカレンに、色々と教えてあげる。


「あの辺りにある酒場、店員さんが胸の大きなお姉ちゃんたちばかりで最高だよ。あっちにあるスナックは、ママさんが優しくてとっても胸が大きくて、頼めばすぐに抱っこしてもらえるんだ。あっ、あそこのお店、お昼にやってる定食屋さんだけど、店主の娘さんがすごい爆乳だから必見だね。それから――」

「いや、女である拙者にそんな情報は要らぬでござるよ……」

「そう? ちなみに、あの街の中心にある大きな建物が冒険者ギルドだよ。地下にダンジョンがあるんだ」

「それを最初に教えてほしかったでござる。……ところで、その建物のあたりが随分と騒がしいようでござるが」

「え?」


 言われてみると、冒険者ギルドの周りに大勢の人が集まっていた。

 元から冒険者の出入りが多い場所だが、それにしても明らかに様子が変だ。


「武器を持って建物を取り囲んでる? それに土の壁のようなものを作ってるような……もしかして、バリケード?」


 どうやら何らかの異変が起こっているようだった。


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