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第301話 ついでに始末していこっかな

 東方から西方に戻るため、セノグランデ号・快でアトラス大山脈を横断していると、前方に巨大な山が近づいてきた。

 周囲の山々と比べて、標高が倍くらいあるかもしれない。


「ん、すごく高い」

「あれがこのアトラス大山脈の主峰だね」


 このセノグランデ号・快ですら、ギリギリ到達できる高さだ。


「酸素が薄くて、呼吸するだけでも辛い環境だね。あと、めちゃくちゃ寒い」


 生身の人間では生きていけるような環境ではないだろう。


「こんな場所で普通に生息できるのはドラゴンくらいかな。それも並みの個体じゃない……あれ? なんか、山の上の方が変色してる?」


 主峰が近づいてくると、どす黒くて粘度の高い液体のようなものに覆われていることが分かった。


 ウ~ウ~ウ~ウ~ウ~ウ~


 操舵室内にけたたましい警報音が響く。

 目の前のモニターに表示された船内地図、その出入口を示す場所にバツ印が出現していた。


「外の大気から危険な成分が検出されたみたい。外に出ない方がいいって」


 恐らく山頂を覆う謎の黒液のせいだろう。


「ん、何か動いた。あそこ、蜥蜴みたいな形状のやつ」

「調べてみよう」


 ファナが示した場所に、探知レーダーを向けてみる。

 すると強い反応があった。


 その形状からしてドラゴンだろう。

 全長30メートルくらいはあって、あの謎の液体の中を平然と歩いている。


『あの液体は恐らく毒かと』

「分かるのか、リンリン?」

『ええ。あれは間違いなく忌まわしき邪竜……毒竜ファフニールでしょう。まさかこんな場所を根城にしていたとは』


 リントヴルムが不愉快そうに教えてくれる。


 ドラゴンの中でも、知能が低くて邪悪な個体を邪竜と呼ぶ。

 ……バハムートも邪悪と言えば邪悪なのだが、一応、会話ができるだけの知能があるからな。


「せっかく見つけたわけだし、ついでに始末していこっかな」


 邪竜は魔族と同じで、放置していて良いことは一つもない。

 こんな場所なら人に被害が出る心配はないが、いつ地上に降りてくるとも限らないからな。


「あ、あんなのと戦う気でござるか!?」

「強そう」

「外は息をするだけでも辛いんじゃなかったの!?」

「さらに、これだけ毒が撒き散らされた状態だ。やつのフィールドに飛び込むことになる」

「大丈夫だよ。外に出る必要はないからさ」


 セノグランデ号・快の戦力を試す絶好の機会だ。

 正直そこらの雑魚ドラゴンでは、試運転として不十分だと思っていたところである。


「……ッ! シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

「こっちに気づいたようでござる!」


 接近していくと、ファフニールがこちらを向いた。

 直後、高出力の魔力砲が発射される。


 ドオオオオオオオオオオオンッ!!


 それがファフニールを直撃。

 いや、ギリギリで躱されたようだ。


 体高が低く、蜥蜴のように地を這って動くファフニールはその巨体に見合わず非常に俊敏なのである。


「毒のブレスがくるわ!」


 お返しとばかりに猛毒の液体を吐き出してくる。

 だがセノグランデ号・快は結界を展開し、あっさりそれを防ぐと、すぐさま追撃の魔力砲を放った。


 またしても邪竜は素早くそれを回避。

 しかし即座に次の魔力砲が襲いかかる。


「いつまで避け続けられるかな?」


 岩壁を這い回りながら必死に逃げ続けるファフニールだったが、やがて魔力砲がその背中を捉えた。


「アアアアアアアアアアアッ!?」


 すかさず魔力砲を連射し、容赦なく邪竜を追い詰めていくセノグランデ号・快。


「……なんか、一方的でござるな」

「ん、やられ放題」

「あいつ、空を飛べたりしないの?」


 うーむ、ちょっと期待外れだったな。


『ファフニールは翼が退化しているため、空を飛ぶことができません。そのためこのように空から攻撃を仕掛けられると、反撃はあの毒のブレスしかありませんが、それも防がれるとなるとお手上げでしょう』

「ブレスを結界で防がれてしまった時点で、もうあっちは打つ手なしなのか……」


 やがて魔力砲が止まる。

 敵を討伐し終えたと、セノグランデ号・快が判断したためだろう。


 無残な姿と化したファフニールの巨体が、断崖絶壁を転がり落ちていく。


『邪竜が死ねば、いずれあの猛毒も消えてなくなるでしょう』

「どうせ誰も来れない場所だし、放っておくか」


 毒塗れなった主峰は放置して、先に進むことにした。


「っ、大山脈の終わりが見えてきたでござる! いよいよ西方の地に足を踏み入れるのでござるな……」


 やがて飛空艇が大山脈を抜ける。

 もはやこの高さを保っている意味はないため、徐々に高度を下げていこうとした、そのときだった。


 ウ~ウ~ウ~ウ~ウ~ウ~


 操舵室内に再び警報音。

 今度は何だと思い、モニターを確認してみると、どうやら前方から巨大な何かが迫ってきているらしい。


「ちょっ、何よ、あれ!?」

「……島?」

「た、確かに島でござるっ! でも、なぜ空の上に島が!?」


 窓の向こうに見えたのは、大空に浮かんでいる広大な大地で。


「あれはまさか……浮遊島?」


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