第298話 操縦席なんて一番の弱点なんだから
「な、何なのぢゃ、あの巨大なカラクリは……」
魔導飛空艇に残っていた将軍・徳山家隆は、眼下に突如として出現した人型の巨大カラクリに驚愕していた。
「平賀研究所を追放されたという男が、力を貸していると言われてはおったが……まさか、こんな孤島であのようなものまで作っておったとは……」
愕然とする家隆。
平賀研究所ですら、まだこれほど巨大な人型兵器を作り出すことなどできないはずだ。
カラクリ巨兵が剣を振るうと豪風が巻き起こり、手にした銃器から放たれた魔力の弾丸は海に着弾して海水の周囲一帯に猛烈な雨を降らせた。
「こ、こんな化け物と、一体どうやって生身の人間が戦うというのぢゃ……? いくらあの西方の戦士たちが強くとも、さすがに手も足も出ぬはず……どんなに強い蟻も、象には勝てぬのと同様ぢゃ」
圧倒的な力を持つカラクリ巨兵に、家隆が絶望していると、
『魔力充填OK。照準OK。――発射準備完了』
突然、どこからともなくそんな音が響いた。
「なんぢゃ? 今の声は……」
『魔力砲、発射』
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!
「~~~~~~~~~~っ!?」
飛空艇から放たれたのは、極限まで魔力を圧縮することで威力を高めた魔力の砲弾だった。
◇ ◇ ◇
カラクリ巨兵を狙い、飛空艇から魔力砲が放たれる。
「こういうこともあるかと思って、遠隔で操作できるようにしておいたんだ」
魔力砲が狙ったのは操縦席……のすぐ下、動力源として捕らわれている女型魔族だ。
もちろん硬い装甲に守られているのだが、極限まで凝縮させた魔力砲なら貫けるだろう。
「ちょっ、まっ、待つのだあああああああああああっ!?」
絶叫して訴える女型魔族だが、一度放たれた魔力砲を止める方法などない。
軽々と装甲を貫いた魔力は、そのまま女型魔族を焼き尽くした。
「死んだ?」
「な、なんか最後まで残念なやつだったわね……」
ファナやアンジェが女型魔族に少し同情する中、愕然としたのは一当斎だ。
「ばばば、馬鹿なっ!? 動力が破壊されただと!? 一体何をされた!? 一瞬、空から何かが降ってきたように見えたがっ……」
魔導飛空艇はステルス状態で空に浮かんでいるので、彼からは突然、空から魔力のレーザーが降ってきたように見えただろう。
動力を失い、動作不能になったカラクリ巨兵など、もはやただの巨大なガラクタでしかない。
それでも一当斎は必死に操縦桿を動かしたり、あちこちのボタンを押したりしていたが、
「おじさんおじさん、動力がないのに動くわけないでしょ」
「~~~~~~っ!? き、貴様っ、どこから入ってきたああああっ!?」
操縦席の中に突如として現れたかわいい赤子に、目を剥いて絶叫する一当斎。
「え? そこの穴からだけど」
「装甲に穴が開いている!? い、い、一体いつ開けた!?」
「おじさんが慌ててる間に、ちょっと魔法で削ってね。思ってたより薄かったよ? 今度からはもう少し分厚くして、簡単には侵入されないようにしないとね」
「この操縦席周りはミスリルで強化してあるのだぞ!? そう簡単に侵入できるはずがない!」
「ミスリル? せめてアダマンタイトくらい使わないと。操縦席なんて一番の弱点なんだから。もっと言うと、外から場所が分からないようにした方がよかったね。もちろん動力の方もさ」
ご丁寧に外から丸見えの作りにしてくれていたので、狙いを定めるのが簡単だった。
まぁ見えなくても魔力を感知すれば場所はすぐ特定できるけど。
「餓鬼の分際で、我にダメ出しをするなああああああっ! あぎゃっ!?」
激情して躍りかかってきた一当斎の腹を、リントヴルムでぶん殴って吹き飛ばす。
「ぐ、くそ……き、貴様は一体、何なのだ……?」
「ごく普通の赤ちゃんだよ」
「そんな赤子がいてたまるかあああああっ!!」
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