第286話 身体ごとカラクリに改造されてる
忍者集団の煙幕が、ファナの風魔法で一気に晴れていく。
「助かったぞ!」
「敵の数は少なくないが、それでもこちらの方が多い!」
「一歩たりとも将軍に近づけさせるな!」
奇襲によって何人か負傷したものの、護衛たちの士気は非常に高い。
精鋭ばかりが集まっているとあって、自分たちの力に自信もあるのだろう。
「もらった! なにっ……? 刃が通らない、だと!?」
「こっちもだ!? こいつら装束の中に何か硬いものを着こんでおるぞ!」
だがそう簡単にはいかなかった。
どうやら装束の下に防具を仕込んでいるらしく、なかなか剣でダメージを与えられないのだ。
「なのにこの素早さはなんだ!?」
「くっ、矢を躱された……っ!」
忍者たちは、その俊敏さと曲芸めいた動きで精鋭の護衛兵たちを翻弄している。
さらに彼らは攻撃手段も特殊だった。
短めの剣での接近戦をやりながらも、手裏剣と呼ばれる手投げの武器を使ったり、毒矢を吹いたり、爆発物を投げたり、正直あまり正々堂々といった戦い方ではない。
戦闘よりも暗殺や謀術に長けた連中らしいやり口である。
加えて隠形によって身を潜めたり、先ほどのような煙幕玉を投げたりしてくるため、かなり厄介だ。
「柳生心念流・滝落」
そのときカレンの斬撃が、忍者の頭部を直撃。
頭が大きく凹んでしまう。
さすがにこれには一溜りもないと思われた忍者だったが、
「っ!? 反撃してきたでござる!? 拙者の攻撃が、まるで効いておらぬでござるか!?」
予想外の反撃を受け、困惑するカレン。
相手は明らかに頭部を破壊されているので、動けるはずがないのだ。
「ん」
ファナの剣が忍者の胴を斬り裂く。
「……金属?」
衣服の奥に覗いていたのは、人間の皮膚や骨ではなく、金属製の何かだった。
「へえ、こいつらもしかして、身体ごとカラクリに改造されてるんじゃない?」
俺の予想を裏付けるように、忍者たちの手首がポキリと折れる。
そこにあったのは銃口だ。
放たれた弾丸が護衛兵たちを襲う。
さらに忍者たちの中には、足のつま先から手裏剣を発射する者もいた。
「なんだこやつらは!?」
「こんな忍者、聞いたことないぞ……っ!?」
未だかつて対峙したことのない特殊な忍者集団に、護衛兵たちは大いに苦戦している。
そんな中、背中から風を噴射させることで大跳躍した忍者たちが、一気に将軍を運ぶ馬車へと迫った。
「させぬでござるっ!」
「忍者風情が、将軍に近づけると思うな!」
「我が命に代えて、将軍をお守りする!」
それを迎え撃ったのが、精鋭中の精鋭剣士たちだ。
馬車の周辺で激しい攻防が繰り広げられる。
「なかなか面白い展開になってきたじゃないの!」
獰猛な笑みを浮かべたアンジェが、強烈な蹴りを忍者の頭部に叩き込み、吹き飛ばす。
普通なら今ので死んでいてもおかしくないが、まったく痛みを感じないのか、忍者は何事もなかったかのように起き上がると、手首の先から弾丸を放った。
アンジェはそれを土壁で防ぐと、
「随分と頑丈じゃない! けど、これならどうかしら!?」
一気に距離を詰め、いきなり忍者に組み付いた。
そこからいつの間にか両足で忍者の頭を挟み込んだかと思うと、バキバキバキッ、という音と共に忍者の首があらぬ方向に曲がる。
「カラテ道場で学んだ絞め技よ! 首を折られたら、さすがにもう動けないでしょ!」
「お姉ちゃん、危ない! すぐに離れて!」
「え? っ……」
ドオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!
凄まじい爆発が起こった。
忍者が自爆したのである。
「ちょっ……何なのよ、今の!?」
咄嗟に土の壁を作りつつ距離を取っていたアンジェは無事だ。
「こいつ、やられたら自爆までするのか……っ! みんな、気を付けて!」
慌てて注意を促すが、残念ながら忍者たちは一枚上手だった。
やられそうになると自分から相手に抱き着き、密着したまま自爆をし始めたのだ。
「っ、は、離れるでござる……っ!?」
最初にその餌食となったのがカレンだ。
ドオオオオオオオオオオオオンッ!!
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