第281話 サラシはちゃんと巻いておくのじゃぞ
「最強のカラクリ兵、酒呑童子や!」
オーガによく似た姿をしたカラクリ人形だ。
兵器として作り出されたものらしく、右手に巨大な剣を持ち、左腕で大砲を担いでいる。
「ガガガ……戦闘、準備、完了……」
そんなノイズ交じりの音声を発したかと思うと、右手の剣がいきなり高速で回転し始めた。
ギュウウウウウウウウンッ!!
正確に言うと、剣を手にした腕の手首から先がぐるぐると回転している。
「剣ってそういう使い方?」
「普通に剣を振るうより、この方が強いんや! 盾としても使えるしな!」
ガシャンガシャンという音を響かせながら、カラクリ兵がこちらに突っ込んでくる。
「轟雷」
そのカラクリ兵に猛烈な雷が落ちた。
当然ながら剣で防げるはずもなく、表面の金属が溶けたり焦げたりしてあっさり動作が停止した。
「ギ、ガガ……故障……故障……故障……故障故障故障故障故障故障――ピーーーーー」
「酒呑童子いいいいいいいいいいっ!?」
ぷすぷすと煙を立ち昇らせながら、明らかに壊れた音声を発し続けるカラクリ兵。
「電気が動力源って言ってたけど、一気に強力な電気をぶつけたらどうなるかなと思ってさ。こうなっちゃうんだね」
許容量を超える電気を流されたことで、回路が壊れてしまったのだろう。
「カラクリの弱点は電気なのかもね。そもそも金属は電気を通しやすいから、兵器として運用するならそのあたりの対策が必要だと思うよ。電気を通しにくい素材でカバーするとかね」
自信作をあっさり壊され、項垂れる源子。
だが俺のアドバイスを受けてハッと顔を上げた。
「その手があったか! ちゅうか、じぶん、なんちゅう優秀な人工知能や……うちでも人工知能の研究は進めとるが、まだ全然やで? せいぜいあらかじめインプットした情報を、取捨選択することくらいしかできひん」
そもそも人工的にゼロから知能を生み出すなんて、魔法では不可能な芸当だ。
「どないなっとるのか、ほんまに知りたいわぁ……分解させてくれへん……?」
「ダメだって言ってるでしょ。でも、このカラクリ兵は貰ってくね?」
「ちょっ、なんでや!?」
「将軍の直々の依頼で僕らを受け入れてるんでしょ? そんな相手を攻撃するなんて、将軍に知られたらどんな罰を受けることか」
「うっ」
「それを黙っててあげる対価だよ」
それから無事に解放された俺は、ファナたちと合流した。
「師匠、どうだった?」
「すごく興味深い研究だったよ!」
カラクリ兵をゲットできた俺は大満足だった。
あとで分解し、その仕組みをじっくり調べてみるつもりである。
研究所を後にした俺たちは、魔導飛空艇でいったんカレンの故郷の村へ。
魔物が討伐されたという情報を得たのか、そこにはすでに復興のために戻ってきている村人たちの姿があった。
「お主らのお陰じゃ。改めて礼を言いたい」
爺さんはまた気ままな田舎暮らしを再開するという。
「儂自身もあのまま死ぬつもりじゃったが、命拾いしてしまったからの。こうして便利な義肢も貰えたし、余生を満喫させてもらうとするわい」
一方、カレンはこのまま村に残るつもりはないようで、
「先生、拙者はまたしばらく武者修行の旅を続けるつもりでござる。今回の一件で、己の未熟さを大いに痛感した。剣も心も鍛え、もっと強くなってから戻ってくるでござるよ」
「ふん、馬鹿弟子も少しは大人になったようじゃの。もはや儂がどうこう言うような段階ではないじゃろう。好きにするがよい」
「……はっ、感謝申し上げる」
「じゃが、一つだけ言わせてくれ。……サラシはちゃんと巻いておくのじゃぞ」
おいジジイなに余計なこと言ってんだごらああああああああああっ!?
そうして爺さんと別れ、俺たちは再びエドの街へ。
空の旅の道中、いきなりカレンが頭を下げてきた。
「拙者、ぜひ貴殿らの旅に同行したいでござる」
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