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第273話 慌てない慌てない

「拙者なら、倒せる……? しかし今、先生の渾身の一撃が通じなかったところでござるよ……?」


 俺の言葉に困惑するカレン。


「その先生を超えたと思ったから戻ってきたんでしょ?」

「そ、そのつもりでござったが……あの魔物、完全に拙者の想定以上だったというか……」

「余計なことは考えなくていいよ。お姉ちゃんはとにかく戦えばいい。ほら、来るよ」

「オアアアアアアッ!」

「くっ!? その言葉、信じるでござるよ!?」


 カレンは慌てて刀を構えた。

 そうして単身、怒り狂う龍へと立ち向かっていく。


「本当に倒せる?」

「もちろん、今のままじゃ難しいね」


 ファナの質問に俺ははっきりと答える。


「どういうこと?」

「もっと身体強化の倍率を引き上げる必要があるってことだよ」


 龍が巨体を躍らせ、カレンを丸呑みしようとする。

 それをカレンはギリギリで避けつつ、龍の頬を斬りつけた。


 しかし硬い鱗にうっすらと傷が入っただけだ。

 恐らく刃は肉にも届いていないだろう。


「やはり無謀でござる! 先生の命がけの一撃で、ようやくこの鱗を突破できたほどでござるよ!?」


 斬りつけたときの手応えのなさに、カレンが悲鳴じみた声を上げる。


「加勢した方がいいんじゃないの?」

「まぁまぁ、アンジェお姉ちゃん、慌てない慌てない」


 そんなやり取りをしている間にも、カレンはどうにか龍の攻撃を回避しながら反撃しているが、やはりあの鱗の前にはなかなか刀が通らない。

 だが当初は龍の巨体を前に遅れがちだった回避行動に、段々と余裕が出てくる。


「動きが速くなった?」

「うん。でも、それだけじゃないよ。見て、いま斬った龍の鱗を」

「最初よりも傷が深くなってるじゃないの!」

「攻撃力も増してきてるってことだね。つまり、身体強化の倍率が上がってきてるってこと」


 一体どういうことかという顔をする弟子たちに、俺は説明する。


「普通、身体強化魔法の効果を高めようとしたら、意識して訓練しないといけないよね」


 ファナとアンジェも、魔力回路の治療後に訓練で習得した。


 身体強化魔法を使いながら剣を振ったり、別の魔法を発動したりできるようになるには、何も考えなくても身体強化魔法を維持できるレベルにならないといけない。

 だがこれが意外と難しいのだ。


「でも、サムライのお姉ちゃんの場合、元から無意識のうちにやってたことだから、別に特別なことをする必要はないんだ。ただ、強い相手と戦えばいい。そうすれば、自然と限界値まで強化されていくはずだから」


 つまり今、カレンは龍と戦う中で、次第に身体強化魔法の性能が高まり、強さを増しているということ。


「柳生心念流・滅廻」


 カレンは龍の頭上へ跳躍したかと思うと、高速回転しながら幾度も鱗を斬りつけていく。


「オアアアアアアアッ!?」

「「効いた!?」」


 ついに彼女の攻撃が通じたらしく、龍が苦しそうな咆哮を上げた。

 頭の上から背中側へかけ、鱗が破壊されて血が流れ落ちている。


「い、いけるでござる! なぜかどんどん身体が軽く、攻撃が強くなっていってるでござる!」


 本人も手応えを感じてきたようで、興奮したように叫んでいる。


 そこから龍とサムライの凄まじい一騎打ちが繰り広げられた。

 カレンの攻撃が通るようになったとはいえ、あの龍の巨体、当然ながら耐久力も尋常ではない。


 対するカレンは、龍の攻撃を余裕をもって避けられるようになったものの、あの牙で噛みつかれたら一溜りもない。


 それでも彼女は集中力を切らすことなく、龍にダメージを与え続けた。

 そして――




「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」




 断末魔じみた咆哮と共に、ついに龍が力尽きて地面に倒伏する。


「や、やったでござる……っ! 先生のっ……先生の仇を取ったでござる!」


 歓喜するカレン。


「うんうん、よくやったね、サムライのお姉ちゃん。じゃあ、ここから先は僕たちに任せておいて」

「…………へ?」


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