第268話 まったく同じやり口ですね
身体強化魔法。
その名の通り、自分の身体能力を一時的に向上させる魔法だ。
火を出したり水を出したりする魔法と違い、魔力を自然現象などに変換する必要がないため、初心者でも使いやすい魔法である。
そのため剣士や格闘家などが、無意識のうちに使って身体能力を高めていた、なんてこともあるくらいだった。
「サムライのお姉ちゃんもそのタイプだね。まぁそんなに強化率は高くないけど」
「拙者が、魔法を使っていた……?」
だからこそファナと互角に近い戦いができたのだろう。
ちなみにファナの方も身体強化魔法を使ってはいたが、
「かなり抑え気味だったね」
「ん、相手に合わせた」
「なっ? そ、それはつまり、本気を出していなかったということでござるか!?」
「そう」
カレンはショックを受けたように一、二歩後ずさる。
「は、はは、ははは……どうやら拙者、井の中の蛙であったでござるな……」
「そんなサムライのお姉ちゃんに朗報だよ!」
「へ?」
「実はその身体強化魔法を、もっと高められる方法があるんだ! 今回は特別に、お姉ちゃんだけに教えてあげるよ!(ニヤリ)」
「大丈夫。ファナお姉ちゃんとアンジェお姉ちゃんもこれを受けて魔力回路が整ったお陰で強くなったんだからううんズルとかじゃないよむしろ世界中の人が受けるべき治療だと思うしそういう時代がもうすぐ来るはずだからサムライのお姉ちゃんは今すぐ受けるといいよ大丈夫痛みとかはないし受けたら世界が変わるしきっとサムライに相応しい強さを身に着けることができるというか強くなりたいのなら受けない選択肢はないでしょ勇気だよ勇気ここで勇気を見せないでいつ見せるのそんなことじゃ真のサムライにはなれないよ大丈夫お姉ちゃんならやれるよサムライの魂があればなんだってできるさあ勇気を出して飛び込んでみよう」
『勇者のときとまったく同じやり口ですね、マスター? 心なしか文言も勇者をサムライに換えただけのような気がしますし』
やり口だなんて、人聞きの悪いことは言わないでほしい。
「そこまで言われたら、むしろ引き下がる方がサムライとしての名が廃る気がするでござる……」
俺の必死の説得もあって、カレンの心が明らかに揺れ動いている。
「決してみんなにやってるわけじゃないよ? お姉ちゃんだからこその特別だよ? しかも今日だけだよ?」
『特別、今日だけ。どれも詐欺師の常套句ですね。しかし先ほど、世界中の人が受けるべきとか言ってませんでしたか?』
それでも一押しになったのか、カレンは意を決したように、
「分かったでござる! 拙者、その治療とやらを受けてみよう!」
「さすがサムライだね! じゃあ、服を全部脱いで」
「……はい?」
「あれ、聞こえなかった? 服を全部脱いで、生まれたままの姿になってね。あ、もちろんサラシもちゃんと外すんだよ?」
「ちょ、ちょっと待つでござる!? 裸!? 裸で受けなければならぬでござるか!?」
困惑したように叫ぶカレン。
「そうだよ。一種の医療行為だし、気にする必要はないよ」
「いや気にするでござるよ! そういうのは先に言っておくでござる!」
「あれ? もしかして、ちょっと気持ちが揺らいじゃった? でもお姉ちゃん、サムライだよね? サムライに二言はないよね? 一度やるって言ったのに、後からやっぱりやめた~なんて、サムライとしてどう?」
「カラクリ人形のくせに随分と煽ってくるでござるな!?」
『やはり詐欺師……早く捕まってください、マスター』
カレンは自棄になったように、着物の帯に手をかけ、力任せに結びを解いた。
「当然、今さら引き下がるつもりなど毛頭ござらぬ!」
サラシも無理やり剥ぎ取ると、たわわに実った双丘が露わに。
ひゃっほおおおおおおおおおおっ!!
やはり俺が予想していた通り、いや、それ以上の素晴らしい乳だ。
こんな尊いものをサラシで隠すよう求めた先生とやらは、どう考えても人として終わっている。
『終わってるのはマスターの方でしょう』
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