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第266話 あいつらこっちにも生息してんのね

「ここが〝妖怪退治奉行所〟でござる」


 カレンの案内で、とある建物へと連れてこられた。


「妖怪? 魔物じゃないの?」

「うむ。この国では魔物のことを妖怪とも呼ぶでござるよ」


 アンジェの疑問にカレンが答える。


「この妖怪退治奉行所は、妖怪退治を専門としている奉行所でござる」


 エドウ国における行政機関のことを奉行所と呼ぶらしい。

 冒険者ギルドのような民間組織はないみたいだが、この奉行所が似たようなことをやっているようだ。


「魔物の出没情報などを収集して公開し、討伐者に報酬を出しているでござる。拙者も時々覗いて良い情報がないか確認しているでござるよ」


 ただ、高額報酬の魔物はすぐに討伐されてしまうという。

 近くの剣術道場なんかが訓練もかねて日頃から目を光らせていて、公開され次第、討伐に向かってしまうそうだ。


 ちなみに魔物の死体を持ち込めば、誰でも報酬を受けられるという。


 奉行所内には、魔物の絵が張り出されていた。

 俺たちのような異国の人間には非常にありがたい。


「なになに? 河童に天狗、ぬりかべ、鵺、鎌鼬……西方じゃ見かけない魔物が多いわね」

「でも小鬼はゴブリンそっくり」

「あいつらこっちにも生息してんのね……」


 ゴブリンは繁殖力が高いからな。

 他にも大蜘蛛や雪入道なんかは西方にも同じようなのがいる。


「やはり高額報酬の魔物は狩り尽くされているでござるな……残っているのは、割に合わないものばかりでござる」


 場所が遠かったり、出没時間が限られていたり、報酬の割に討伐難度が高かったりと、割に合わないような魔物は残りがちのようだ。

 この辺りは冒険者ギルドと同じだな。


「この鵺っていうのは強そうだね」


 イラストによれば、猿や虎、蛇などで構成されたキメラのような魔物だった。


「鵺は強敵でござるよ。闇に身を潜める特殊な能力を持つため、神出鬼没の魔物でござる。しかも動きが俊敏で、逃げ足も速い。ゆえに報酬の割に好んで討伐を試みる者が少ないでござる」

「ん、逆に狙い目」

「そうだね、ファナお姉ちゃん。一体倒すだけで百万圓だし」


 鵺の討伐報酬は百万圓。

 他の魔物の報酬と比べても破格のものだった。


「相当な自信があるようでござるな……。ならば、拙者も否やはない。貴殿らに従うでござる」


 というわけで、鵺の目撃情報があった場所へとやってきた。

 昼間でも薄暗い、山の中の峠道である。


「どうやって鵺を見つけるでござるか?」

「索敵」


 俺は索敵魔法で周囲の様子を探った。

 すると峠道から逸れて数百メートルほどのところに、明らかに強い魔力の塊を感じ取ることができた。


「多分こっちだね」

「まさか、鵺の居場所が分かるでござるか……? そんな能力まであるとは……最新のカラクリは本当に凄いでござるな……」


 カレンは相変わらず俺のことをカラクリ人形だと思っているようだ。


「リルは何か感じる?」

「うむ、少し臭う気がする。複数の獣臭が混じり合ったような臭いだ」


 リルの鋭い嗅覚もまた、高い索敵性能を持つ。

 俺たちは峠道を逸れ、森の中に足を踏み入れた。


「お? こっちの接近に気づいたかな」

「その可能性は高い。臭いに微かな緊張が混じった」


 索敵による反応が弱くなった。

 闇に身を潜める能力を持つという話だし、警戒して少し隠れたのかもしれない。


 だが完全には存在を消し切れていない。

 鬱蒼とした森の中は薄暗いとはいえ、まだ陽の高い昼間だしな。


「あそこだね。ぼんやりとした影が見えるでしょ?」

「ん、言われてみれば」

「夜だったら絶対分からないわね」


 隠れても無駄だと理解したのか、薄闇の中から鵺の姿が浮かび上がってきた。


「間違いない、鵺でござる! 本当にこんなに簡単に見つけてしまうとはっ……」


 まさにあの奉行所にあったイラストの通りの姿だ。

 顔は猿、胴体は狸、四肢は虎、尾は蛇のキメラで、全長は五、六メートルあるだろうか。


 なお、狸は東方にしかいない動物である。


「キイイイイイイイイイイッ!!」


 鵺はそんな奇声じみた雄叫びをあげると、猛スピードで躍りかかってきた。


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外れ勇者1巻
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