第261話 どのみち無一文だけど
エドウ国ではここ数十年で、一気にカラクリと呼ばれる道具が発展し、普及するようになったという。
その進歩は目覚ましく、今や日常生活の中で当たり前のように使われているそうだ。
特に、自動で洗濯をしてくれるカラクリ、食品などを自動で温めてくれるカラクリ、自動で掃除をしてくれるカラクリ、この三つは三種の神器として、各家庭に一台ずつは必ずあるのだとか。
「なるほど、これがその〝洗濯機〟ってやつか」
エドウの街中にカラクリを販売している商店があったので覗いてみたところ、大きな箱型の道具がずらりと並んでいた。
この箱の中に汚れた衣類を突っ込んで蓋を閉めると、自動で奇麗に洗ってくれるというのである。
『見た感じ、魔道具とは少し性質が異なるようですね』
『そうだな。魔道具は魔法を利用した道具だけど、見た感じそうじゃない。動力源も魔力じゃなさそうだし』
リントヴルムの指摘に俺は頷く。
例えば俺が作った魔道具の中にも、洗濯や掃除をしてくれるものがあって、それぞれ水の魔法や風の魔法を利用していた。
だがこの洗濯機には、魔法を発動するための魔法陣がどこにも刻まれていないのだ。
『魔道具っていうより、むしろ〝機械〟って言った方がいいかもしれない』
『機械ですか?』
『ああ。魔法は強引に物理法則を捻じ曲げるものだけど、機械はむしろ物理法則に則ったものなんだ。ある意味、魔法よりも難しいかもしれない』
魔法そのものがあまり発達していない地域なので、こうした独自の発展を遂げたのかもしれない。
もちろん魔道具だって、必ずしも物理法則を無視しているわけではない。
というのも魔法だけで目的を達しようとすると、より複雑な魔法陣が必要で、膨大な魔力を要求されてしまうからだ。
例えば俺が作った魔導飛空艇も、空気抵抗や揚力を考慮することで、省エネを実現しているのである。
『外から水を入れて、中身をぐるぐる回転させる仕組みか。回転はどうやって起こしてるんだろう? 外から見てるだけじゃ分からないなぁ。分解しちゃダメかな、これ?』
『絶対ダメでしょう。売り物ですよ』
『じゃあ買えばいい』
カラクリの仕組みが気になった俺は、洗濯機を一台、購入することにした。
……のだが。
「申し訳ありませんが、このような貨幣は当店で扱えません」
店員に怪しい者を見るような目でそう言われてしまった。
「そうか! 西方とは使っている貨幣が違うんだった!」
俺は思わず頭を抱える。
うっかりしていた。
「え、この国じゃお金を使えないってこと?」
「そうなるね。まぁアンジェお姉ちゃんはどのみち無一文だけど」
「うるさいわね!?」
そういえばかつて来たときも困ったのだ。
ただ、今は西方と交流もあるので、どこかで貨幣の両替ができるかもしれない。
「何かを売ってお金にする手もあるけどね。西方の物品となると、それなりの高値が付くはず」
店を後にした俺たちは、ひとまず両替ができる場所を探すことにした。
役所なんかがあればいいのだが……。
「「「うおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」
突然、大歓声が響き渡った。
一体何事だと思って見てみると、ちょっとした空き地に人が集まっていた。
「他に拙者に挑戦する者はおらぬでござるか!」
群衆の向こうで声を張り上げていたのは、一人の長身少女。
東方人らしい艶やかな黒髪の持ち主で、ファナやアンジェとそう年齢が変わらない印象だ。
その長い黒髪を頭の後ろで一本に結わえ、男性モノと思われる着物を身に纏い、腰には刀を提げていた。
「拙者に勝つことができれば賞金一千万圓でござる! 腕に覚えのある者はおらぬか! 参加費はたったの一万圓でござるよ!」
どうやらああやってお金を稼いでいるらしい。
「一千万圓って多分、それなりの大金だよ。だってあの洗濯機で五万圓だったし」
「ん、面白そう。やってみる。お金も入って、一石二鳥」
早速、東方剣士と手合わせできる機会がやってきたと、嬉々として挑戦を志願するファナだった。
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