第258話 VIPルームで遊ばれますか
「おめでとうございます、レウス様! この度の交換によって、あなた様は当店のVIPとなりました!」
結果的に今まで稼いできたお金をほぼすべてコインに換えれば、シークレットサービスを受けられるVIPになることができた。
「VIPになれば、専用のVIPルームで遊ぶことができます。そこでは通常とは違う、より高品質なサービスを受けることが可能です。早速、VIPルームで遊ばれますか?」
「遊ぶ~~っ!!」
俺は即答する。
なにせこのために持ち金の大半を継ぎ込んだのだ。
今までいっぱい稼いできてよかったぁ~。
『……ただ裸の接待を受けたいがためだけにそんな額を費やすなんて、愚かとしか言いようがありませんね』
呆れるリントヴルムを余所に、俺はバニーガールに案内され、噂のVIPルームへ。
「さあ、どんな絶景が広がっているのか……っ!」
目に魔力を集中させ、視力を極限まで高める。
そうして俺が見たものは、
「「「ようこそ、VIPルームへ!」」」
一般ルームの店員たちよりさらに見目麗しい女性ばかりで構成された、バニーガールたちだった。
そう、バニーガールだ。
確かに女の子たちのレベルは一般ルーム以上のようだが、衣装は細かい部分が違うだけでほぼ同じ。
「ええと……店員のお姉ちゃん?」
「はい、何でしょうか?」
「このVIPルームって……店員はみんな、ストリップなんじゃないの?」
「……? いえ、そんなサービスは行っていませんが?」
俺は内心で叫んだ。
あの野郎どもっ、偽情報流してんじゃねえええええええええええええええええええええええええええっ!!
「やってない!? 僕はVIPだよ!? 金貨一万枚相当のコインを買った、これ以上ない太客なんだけどさ!? そんなVIPが希望するなら、それに答えるのがプロってもんじゃないの!?」
「は、はあ……」
いきなり大声でガチ切れした赤子に、店員が大いに困惑している。
『完全に悪質なクレーマーですね。こういう輩は客ではありません。早々につまみ出すべきでしょう』
と、リントヴルムが辛辣に訴えているが、俺はそれを無視。
「ええい、従業員じゃ話にならない! オーナーを出せ!」
「しょ、少々お待ちください」
慌ててバックヤードに駆け込む店員。
しばらくすると小柄な老婆が姿を現した。
年齢は軽く七十は超えてそうだが、その立ち居振る舞いから、明らかにただ者ではない。
「わたくしがオーナーのマルシアです、お客様」
「君がオーナー? 僕はVIPになれば、店員のストリップ接客を受けられると思って、それで大金を継ぎ込んでコインを買ったんだ! それなのに、そんなサービスはやってないっていうの!?」
「お客様、ご希望に添えず、大変失礼いたしました」
血相を変えた俺の訴えに、まずは丁重に頭を下げるオーナーの老婆。
まるで動揺している素振りもない様子から、これまで相応の場数を踏んできたのだろう。
「ですが、それはとても素晴らしいアイデアでございます。もし実現できれば、きっとお客様が喜んでくださるでしょう」
「それが分かっているなら、なんでやってないのさ!?」
「はい。実はこの国の法に違反するからでございます」
「あれ? そうなの?」
どうやらストリップでの接客は、法令で禁止されているらしい。
禁制区の外は割と寛容だが、当然ながら限度があるようだった。
『残念でしたね、マスター』
リントヴルムが嘲弄してくるが、しかしオーナーの老婆の話には続きがあった。
「しかしお客様第一主義をモットーとする我が店。お客様のご要望とあらば、全力でそれに添うのが我らの使命でございます」
「えっ? ということは……」
「これより、ストリップでの接客をいたしましょう。無論このことは絶対に他言無用でございます」
マジで!? やってくれるの!?
うひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!
やっぱ何でも言ってみるもんだよね!
『……こういう輩を甘やかすからクレーマーが付けあがるのです』
いやいや、俺はクレーマーじゃない、VIPだ!
VIP最高! いっぱいお金使ってよかった~~っ!
「では、とくとご賞味あれ」
大興奮の俺の目の前で、老婆はそう力強く告げると、なぜか自分の着ていた衣服に手をかけ、
バリバリバリッ!!
一瞬で破り捨てた。
現れたのは、老婆の皺くちゃの裸体である。
「このわたくし自らこの姿で接客して差し上げましょう」
「違う違うそうじゃねえええええええええええええええええええええっ!!」
俺は全力でVIPルームから逃走した。
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