第254話 若くて健康的な男子求む
「これだ!」
噂のポスターを発見し、俺は快哉を上げた。
『若くて健康的な男子求む。詳細は王宮出張所まで』
この国を訪れていた人たちに話を聞いたところ、どうやらこの国の女性たちが子供を作るのに、外部の男性から子種を提供してもらっているらしい。
誰でもエントリーできるそうだが、当然ながら厳しい審査があるそうだ。
実際にその審査を受けたという男性から話を聞いたが、若くて健康なだけではなく、人格的にも肉体的にも優れ、なおかつ優秀であることが求められるらしい。
だがその審査を通過すると、禁制区の一画への立ち入りが許され、そこで繁殖活動に邁進することになるという。
「よし、応募しよう」
俺ほど若くて健康で、そして人格的にも肉体的にも優れ、優秀な人間はいないだろう。
『さすがに若過ぎるかと。あと、人格的に優れている……? なんにしても年齢制限があるようです。そちらのポスターにも十五歳以上二十五歳未満と記載があるでしょう』
「がーん……」
リントヴルムの指摘に、俺は一瞬ショックを受けるも、
「いいや、何の問題もない! 一時発育急進魔法を使って、大人の姿になればいいんだ!」
己の寿命を犠牲にすることで、自分の肉体を一気に成長させるという魔法だ。
先日の復活した魔王アザゼイルとの戦いでこの魔法を使用し、二十歳頃には立派な体躯の男前になることを確認している。
あれなら間違いなく審査を突破できるだろう。
『あんな高度な魔法をしょうもないことに使わないでください』
「しょうもなくなんかない! むしろ魔王と戦うよりも重要だ! 審査を通過したらガチハーレムが待ってるんだぞ!?」
『そんな発言をする人間のどこが人格的に優れているのか、解説していただけますか?』
リントヴルムは呆れながら、
『残念ながらあの魔法には時間制限があります。無理に長時間使用し続けると、あっという間に寿命が縮んでしまうでしょう』
「メルテラに若返りの方法を教えてもらうから大丈夫」
『ではわたくしは絶対に教えないように説得いたしましょう』
「なんで!?」
だが愛杖の言うことももっともだった。
あの大人の姿を長く維持しておくのは難しく、戦い後に勝手に元の姿に戻ってしまったほどだ。
仮に長時間使用が可能になったとしても、この赤子の身体に大きなダメージが残ることは間違いない。
「それでも男には戦わねばならないときがあるんだ!」
『もう勝手に死んでください』
結局、禁制区への立ち入りは諦めた。
もし審査を突破して種馬ならぬ種人になれたとしたら、最低でも一年くらいはその仕事で拘束されることになると知ったからだ。
さすがにそんなに長期間、この国に留まる気にはなれない。
なにせ赤子でいられる時間は短いのだ。
あと、やはりいくらこの国を維持していくために不可欠なものだとしても、不特定多数の見ず知らずの女性とそういう行為をすることに抵抗があった。
俺の倫理観にそぐわないのだ。
というわけで、普通にこの砂漠の国を楽しむことに――
「うっひょおおおおおっ! お姉ちゃん、良い胸してるううううううっ!」
俺は拳を突き上げて絶叫する。
視線の先には舞台があって、そこでは露出度の高い衣服を身に着けた美女たちが、際どいポーズを取っていた。
この砂漠の国には、訪れる人々を楽しませるための様々なエンターテイメントが発展しているらしく、セクシーダンスと名付けられたこの舞台は、その中でも大人気興行の一つだ。
男子禁制区があるくらいだから色々と厳格なのかと思っていたが、どうやら禁制区の外は割と寛容なようだ。
『倫理観云々の話、どこにいきました?』
リントヴルムが呆れたように指摘してくるが、俺は無視して舞台上を凝視。
褐色の肌の美女たちはいずれ劣らぬ豊満な胸の持ち主ばかりで、彼女たちが動くたびにブルンブルンと揺れまくっている。
熱狂する会場は超満員。
生憎と舞台から距離のある席しか取れなかったものの、魔法で視力を強化しているので、肌の小さなホクロすらはっきり見ることができた。
「禁制区なんかに入らなくたって、十分楽しめるじゃないか! 最高の街だね!」
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