第253話 強欲な赤子ですね
「貴殿らが力を貸してくれたお陰で、こうして無事に国を取り戻すことができた。貴殿らは我が国の英雄だ」
遺跡から戻ってきてから数日後、俺たちはとある場所に呼び出されていた。
そこには女王エレオーネがいて、改めて今回の一件を感謝されたのだ。
街中にいた砂賊たちは残らず捕まえることができたという。
そして怪我の功名とでもいうべきか、中継貿易で成り立つこの国にとって、今回の一件で隊商の脅威になっていた砂賊を一掃できたのは大きかったようだ。
「今後は専門の部隊を結成し、徹底した取り締まりを行っていくつもりだ。今回のようなことが二度と起こらないようにな」
ちなみに首謀者であったカイムは、ほぼ確実に処刑されることになるという。
「それだけの罪を犯したのだから当然だ。私は女王として、しかるべき判断を下さねばならない。……ただ、レウス殿、貴殿のお陰でやつと色々なことを話すことができた。ありがとう」
「うん、それはよかったね」
それから褒賞ということで、この砂漠でしか採れない鉱石を使った装飾品やこの国の伝統工芸品などを貰った。
一応ありがたく受け取ってはおいたが、当然ながら俺が欲しいのはそんなものではない。
俺が欲しいものは……そう、この国の男子禁制区域を自由に動き回れる権利だ!
『強欲な赤子ですね』
いやいや、国を救った英雄なんだぞ?
それくらいむしろ当然だろう。
そうして俺は美女たちに囲まれ、夢のハーレム生活を満喫するのだ!
『東方に行くのではなかったのですか?』
あんまり自分から要求するのもスマートではないので、俺はほんのりとエレオーネに訊いてみた。
「ところでお姉ちゃん。男子禁制の区域って、旅人でも女性なら入ることができるんだよね」
「ああ、女性なら問題ない。無論、すべての場所に立ち入れるわけではないがな」
「じゃあ、うちの三人娘も入れるってことだよね」
「当然だ。我が国の英雄が希望するなら、この王宮も案内しよう」
よしよし、思っていた通りの流れだぞ。
この感じなら大丈夫そうだ。
俺が大人の男ならともかく、三人娘の立ち入りが許されて、かわいい赤子だけ許されないなんてあり得ないだろう。
「僕もそれに同行しても?」
「悪いがそれは難しい」
「……ほえ?」
思わず変な声が出てしまった。
「え、あれ? 聞き間違えかな? 今、難しいって言った?」
「そうだ。貴殿には本当に感謝している。だが生憎とそれとこれとは話が別なのだ」
「ちょっ、何で!? 僕、赤ちゃんだよ!?」
「赤子とて例外ではない。特に今回、カイムの件があったばかりだ。やはりこの伝統は、厳密に守らねばならないと確信した。それでこの場も、禁制区の外に設けさせてもらった」
エレオーネがわざわざ出向いてくれたのかと思っていたが、どうやら俺が男なので王宮への立ち入りができないからだったらしい。
俺のハーレムがああああああああああああっ!
クソおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!
『ざまぁですね、マスター』
禁制区への立ち入りは許されなかったものの、代わりに宿はずっと無料。
飲食店などの利用もすべて王家が支払ってくれるらしく、しかも何日でも滞在してくれていいと言われた。
「そんなんで釣り合うわけないだろおおおおおおおおおっ!?」
せっかくだからあちこち見てみたいと女性陣が出かけたあと、一人だけ宿に残された俺は思わず絶叫していた。
『まぁまぁ、落ち着いてください、マスター。ぷぷぷ』
リントヴルムが意地悪く嗤っている。
そんなキャラだったっけ……。
「しかしこの国、こんなに厳密で、どうやって子供を増やしてるんだ?」
ふと湧いてきた疑問。
国を維持していくには子供を産まなければならないわけだが、それには男が必須だ。
「ちょっとその辺の人に訊いてみよう。ねぇねぇお兄ちゃん」
「赤子が喋った!?」
「最近の赤子は喋るんだよ。それより、この国の女性たちって、どうやって赤ちゃんを作ってるか知ってる?」
「最近の赤子はもうそんなことに興味を示すのか……」
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