表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

253/319

第252話 存在そのものが異常ですから

「聖光」


 俺の使うこの魔法は、アンデッドを浄化するだけに留まらず、あらゆる闇を打ち払う力も持っている。


 カイムの装備した悪夢の爪から放たれる闇の矢は、エレオーネに届く前にこの光で消滅した。


「……なんだと?」


 予想外の事態に少し呆然となるカイム。

 そこでようやく俺の存在に気付いたらしい。


「何でこんなところに赤子がいる!?」

「どうも、かわいい赤ちゃんで~す」

「しかも喋っただと!?」


 お約束の反応を示してくれるカイムを余所に、俺は同じ魔法でエレオーネたちを拘束していた闇を消し飛ばしてやる。


「なっ!? やはり先ほどの光もお前の仕業か!? だがこの爪で生み出した闇は、そう簡単には払えないはず! いや、そもそもなぜ赤子が魔法を使っている!?」

「いきなり疑問が多いね」

『誰でもそうなるかと。マスターは存在そのものが異常ですから』


 俺を危険な存在と認識したのか、カイムは先ほど作り出した闇の戦士たちをけしかけてきた。


「聖光」


 またも同様の魔法を放ってみたが、闇の戦士たちは光が直撃しながらも躍りかかってくる。


「なるほど、元が人間の身体から、そう簡単にはこの光で消せないのか」


 光を浴びた部分に関しては一時的に消失したものの、すぐに修復されて元通りになってしまう。

 気づけば周囲を取り囲まれていた。


「クハハハッ、死ね!」


 四方八方から繰り出される攻撃。

 無論すでに俺はそこにいない。


「それよりこの爪の方を取り除いちゃった方がよさそうだね」

「……は? いつの間に!?」

「風刃」


 カイムの腕ごと悪夢の爪が宙を舞った。

 俺が放った風の刃で、肘から先を切り飛ばしてやったのだ。


 バハムートに喰わせてもよかったのだが、一応この武具は初代女王が使っていたものらしいからな。

 勝手に消失させてしまうのはマズイだろう。


「~~~~~~ッ!? ぎゃあああああああああああっ!?」


 血を噴出させながら絶叫するカイム。

 悪夢の爪は地面を転がり、先ほど作り出された闇の戦士たちは粒子となって消えていく。


 俺は悪夢の爪を拾うと、カイムが出てきた隣の部屋へ。

 そこには空になった宝箱が置かれていて、その周囲に結界の魔法陣が描かれていた。


 魔法陣の一部が消えかかっているので、長い年月の間に結界自体も弱まっていたらしい。

 それでカイムに破壊されたのだろう。


「危険だから改めて封印しておこう」


 悪夢の爪を宝箱に仕舞い、新たな結界を施しておく。

 ちょっとやそっとでは破壊できない強力なものにしておいたので、万一今回のようなことがあっても大丈夫なはずだ。


 元の部屋に戻ると、カイムは自らの腕から流れ出た血の水溜まりの中にいた。

 もはや瀕死の状態だ。


「哀れな最期だな、カイム」

「ク……ククク……同情してくれるのか、エレオーネ……」


 姉弟ながら、性別のせいでまったく違う人生を歩むことになった二人。

 頭の中を色んな想いが去来しているのだろう、様々な感情がない交ぜになった表情で見つめ合う。


「貴様のしたことは許されることではない。だが……もし私が男に生まれていたらどうなっていたかと考えてしまう」

「…………ククク」


 もし二人の性別が逆だったなら、互いの立ち位置は今、逆だったのかもしれない。


「あ、ごめん、治療するの忘れてた」


 俺は再生魔法を発動。

 すると床に放置されていたカイムの腕が独りでに動き出し、切断面とくっ付き、融合する。


 失われた血も再生して、あっという間に顔色がよくなった。


「「……は?」」


 エレオーネとカイムがそろって呆然とする。


「積もる話もあるだろうし、もうちょっとゆっくり話をしたら? そのうえで、国の法律に則って処刑するなりなんなりしたらいいと思うよ」


コミック版『生まれた直後に捨てられたけど、前世が大賢者だったので余裕で生きてます』の8巻、本日発売です!  よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

外れ勇者1巻
4月24日発売!!!
― 新着の感想 ―
今から死に別れようと思ってた家族が突然蘇生されたら気まずくね? いや戦友でも恋人でも同じだと思うが
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ