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第248話 小さくてスペースも取らないかわいい赤ちゃんだしね

 初代女王が使っていたとされる呪いの武具。

 手にした者に強大な力を授けてくれる一方で、その精神を蝕み、やがては破壊の衝動に突き動かされるだけの獣と化すらしい。


「しかし初代女王には生まれつき、あらゆる呪いを無効化する力があった。それゆえ禁具を扱うことができたのだ」


 それだけ聞くと破格の才能だが、逆に彼女には生まれながらに、とある呪いに侵されていたという。


「男を産むことができない呪いだ。しかもそれは血に刻まれるほどに強いもので、何代も先の子孫にまで引き継がれている。この呪いがあったがゆえに、逆に他の呪いが打ち消されていたわけだ」


 今この国に住む女性たちは、多かれ少なかれ初代女王の血を継いでいるようだ。

 血の濃度によって呪いの強さには差があるのだが、この国の女性たちから男の子が産まれてくることは非常に稀だという。


 この国が女性ばかりなのはそうした背景があったようだ。


「男の子が産まれてきたらどうなるの?」

「産んだ母親が育てることはできない。内城壁の外にある施設に入れられるのだ」


 男子禁制の区域で生活することはできず、外側の居住区で育てられるらしい。

 なかなか徹底している。


「赤ちゃんまで入れないなんて……」

『マスターも今すぐ出ていくべきかと』


 もちろん今は緊急事態なので許されている。

 そもそも砂賊の男たちが我が物顔でこの区域を占拠していたくらいだしな。


「なんにしても、その禁具というのが狙いなら放ってはおけないね」


 幸いファナたちの活躍で、すでに王宮は完全奪還していた。

 暴れて戦力を引き付ける役割だったのに、それぞれ敵を全滅させてしまったので、王宮まで制圧してくれたのだ。


 街中に残った砂賊も彼女たちに任せて、俺とエレオーネはその遺跡までやってきた。


「こうして見るとかなり大きいね」

「地上に見えている範囲だけでなく、地下にも続いている広大な遺跡だ。内部にはアンデッドが巣食い、危険なトラップも仕掛けられている。もはやダンジョンのようなものだ」


 砂賊たちがこの遺跡に戦力を割いたのは、簡単には攻略できないと考えたからだろう。


「入り口は頂上付近だ」


 まずは外壁から三角錐の頂上を目指す。


「所々に落とし穴が仕掛けられてるね」

「その通りだ。落ちれば最期、針山に叩きつけられて穴だらけになる」


 エレオーネの案内で、落とし穴を避けつつ頂上に辿り着く。

 そこには固く閉じられた扉があった。


「初代女王の血を継ぐ者にしか開けられない扉だ。代々の女王だけが知る合言葉も必要だ」


 そう言って扉に手を触れたエレオーネは、


「開け、ゴマアザラシ」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ、という轟音と激しい振動とともに、扉がゆっくりと開いていく。

 その先には遺跡の内部へと続く階段があった。


 内部は狭い通路も多く、トラップのことを考えると大人数ではかえって危険だからと、中に入るのはエレオーネと精鋭の女性兵五人、そして俺の計七人だ。


「本来ならこの先に部外者を連れていくのはご法度だが、今は緊急事態だ。特別に貴殿の同行を許したい」

「小さくてスペースも取らないかわいい赤ちゃんだしね」

「……本当に貴殿が赤子なのか、大いに疑問だが」


 どこからどう見ても赤ちゃんですよ、ばぶー。


『内側からエロジジイのオーラが滲み出てますが』


 遺跡の内部構造をある程度は把握しているらしく、途中でいくつも分かれ道があったが、エレオーネは迷うことなく進んでいく。


「女王の座を受け継ぐとき、先代と共に遺跡の最奥に赴くのだ。そしてそこに眠る初代女王の前で代替わりの議を執り行う」


 今はそのたった一度の記憶を頼りに進んでいるという。

 ルートだけでなく、トラップも的確に回避していた。


「いずれまた私が次の女王に正しいルートを教えねばならないからな。必死に覚えたんだ」


 さすがは女王、と思っていると、


「……また分かれ道だな。ここは……む……どっちだったか……」


 もしかして忘れちゃった?


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― 新着の感想 ―
[一言] あれ?カイムとやらが王墓に侵入できたということは…
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